↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お兄様を愛さない人生  作者: 雛雪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/8

第三話 診察

 「アーイシャ…」

 前世において、結婚後しばらくして、町中でハビーバと偶然出会った。私はお茶に誘われ、近くのカフェへと二人で寄ることになった。


「申し訳ありません、ハビーバ様。このような事になりまして…」

 経緯が経緯なだけに、私はハビーバに合わせる顔もなく、あの日以来、会うことはなかった。

「大丈夫よ。いきさつはお聞きしたわ。お気になさらないで」

ハビーバは微笑むと私の両手を包み込んでくれた。

「なるべくしてなったのよ。それに私……」

 彼女は言葉を切ると、息を吐きだすように、

「長く生きられないの」

 と言った。

「…末期の病だと医師に言われたわ。気づくのが遅すぎたのよ」

「それはいつ……」

「先日よ。…もう少し早く、せめて半年前に気づいていたら、治ったかもしれないわ」


 私がサキートと結婚したのは半年前。そうであれば、もっと前、彼らの別れる原因になった、あの出来事の時に分かっていれば、ハビーバの病はひどくならなかったのかもしれない。


「サキートには伝えないでね。あなたたちの幸せを願ってるわ」


そして半年後に彼女は亡くなった。


優しいハビーバ。

今生では、あなたの命を救いたい。


◇◇◇


 留学の準備を進める中で、アーイシャはハビーバと会うことが増えた。


「留学なさるんですって?」

「はい」

「遠くへ行ってしまわれるのね」

「寂しくなりますか?」

「ええ。でも、あなたが決めたことなら応援しますわ」

 彼女はそう言って微笑んだ。

 私は少し間を置いてから口を開いた。

「その前に一度お医者様へ行こうと思っていますの」

「どこかお悪いの?」

「そういうわけじゃないんです。ただ、向こうで何かあったら困るでしょう? 一度ちゃんと診てもらおうと思って」

「それは大事ね」

「でも、一人だと少し心細くて」

 不安そうな顔をして言うと、ハビーバは笑った。

「付き添えばいいのかしら?」

「お願いできますの?」

「もちろん」

 約束の日、二人で診療所へ向かった。

 診察を終えた私は、待合室で結果を待つハビーバへ顔を向けた。

「ハビーバ様も診て頂いたらいかがでしょうか?」

 前世ではハビーバは病気で亡くなった。

 だから今回は少しでも気になることがあるなら、早めに診てもらってほしかった。


「私も?」

「結婚も近いのですし、一度くらい受けておいた方が安心では?」

「そんなものかしら」

「そんなものですよ」

 ハビーバは少し迷ったあとで受付へ向かった。

 

診断結果を聞く時、彼女は黙って医師の話を聞いていた。

 

「驚いたわ」

 診療所を出てから、ハビーバが口を開いた。

「自分が病気だなんて考えたこともなかった」

「早く見つかって良かったです。お医者様も完治するとおっしゃったのでしょう?」

「ありがとう、アーイシャ」

「私は何もしていませんよ」

「それでもよ」


 これでハビーバが死ぬことはない。前は気づくのに遅れて亡くなってしまったのだから。


 数ヶ月後、サキートとハビーバの結婚式の日取りが決まった。

 屋敷では準備が進み、その間にも留学の日は近づいていた。


 この時の私は、

一、日記帳を燃やすこと

二、二人を仲直りさせること

三、ハビーバの病気の早期発見と治療

四、遠く離れる

 これで、前の人生につながる出来事はすべて変えたと思っていた。


 私の留学する日は三日後に迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。