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お兄様を愛さない人生  作者: 雛雪


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3/8

第二話 留学

 伯父からの話は隣国への留学についてだった。

 前回は留学しようとしたところ、サキートとの結婚が決まり行けなかった。

 今回は必ず行く。もう二度とあんな死に方はしたくない。

 


「お兄様、大丈夫?」

その後、サキートの部屋に向かった。

扉を開けると、彼はソファーに持たれかけ、グラスを傾けていた。

 酔ったサキートを見て、前世の夜を思い出した。

 身体が強張る。それでも私は、その場から逃げなかった。


 ーーこの日のことは覚えている。

 あの夜、サキートは酒を浴びるように飲み、ハビーバは怒って家へ帰った。

そして、その夜が全ての始まりになった。


◇◇◇


「お前はいつも優しいな。俺が好きなのか?」

 酩酊した彼は私に口付けをし、私も好きな彼の口付けに酔い、夢中になって応え返した。

初めてだった。幸せだと感じたのは。

でも、彼の手が私の服を脱がせて中へ入り込んだ時、彼は「ハビーバ……」とつぶやいた。

私はその瞬間、冷水を浴びせられたかのように夢から目覚め、

「やめて、お兄様!私はハビーバ様じゃない!やめて、やめて」と泣きながら抵抗した。

サキートはやめなかった。


 そして翌朝、侍女が戸を叩いた。

 寝ぼけながら生返事を返したサキートの前で、侍女の手から水差しが滑り落ちた。

 その割れた音で、彼は完全に目を覚ました。


「アーイシャ…俺はなんてことを」

「お兄様……私…」

彼は言い訳する事も出来ず、シーツに付いた赤い染みと蒼ざめた裸の私を見て、その後、責任を取って私と結婚したのだった。


◇◇◇


 ーー今回は前のようにはしない。

 ハビーバをサキートの隣に戻す。私は、あの未来には進まない。


「お兄様、飲み過ぎは身体に毒ですわよ。お水を飲んでくださいな」

私は何とかサキートに水を飲ませると、眠り始めた彼の耳元で何度も言い聞かせた。

「ハビーバとは別れませんよ。これは些細な喧嘩です。明日になれば、きっと彼女と仲直りできます」

私は彼に毛布を掛けると自室に戻った。


 

 翌朝、私はハビーバの屋敷へ向かった。

 突然の訪問に、彼女は驚いた顔をした。

「アーイシャ。こんな朝早くからどうなさったの?」

「先触れもせず、いきなり来てしまい申し訳ありません」

「気にしなくていいのよ」

「お兄様が昨晩から酔っていらして、ハビーバ様に悪かったと繰り返しおっしゃっているんですの。…それで私、心配になりまして、思わずこちらへ来てしまいました」

 ハビーバの表情が少し変わる。

「サキートが?」

「後悔してるんだと思います」

 そう言って、小さく笑った。私もね、と心の中で皮肉る。

「でも、私が言うことではないですね」


「あなたは優しいのね」

 

 そのままハビーバはサキートの元へ戻った。


 これで一つ。

 前世とは違う未来になった。


 二人が仲直りしたことを確認すると、私は留学の準備を始めた。

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