暗躍する影
「……まずいな……」
——男は自身の書斎で一人頭を抱えていた。
事は数分前、とある手紙が来たことに起因する。
そこには、自身と同格の公爵家から、言うなれば「君、社交をおろそかにしてるよね。君の息子の方が頑張ってるよ?交代したらどうだい?」
という言葉を、オブラートに包み込んだような手紙だった。
「——ルースだな?」
そう言って、男は忌々しそうにどこか遠くの方を見やる。
「さて、どうする……?」
男はこの状況を打開するために思考を巡らせる。
このままでは、あいつの手に当主の座が渡り、自分が自由にこの財を使う事は出来なくなるだろう。
それに、他の公爵から目を付けられている状況もよくない。
このままでは、バレてはまずいことまで明らかになってしまう可能性まである。
「ちっ。こうなれば……」
そう言って男は書斎の本をいじる。
いくつかの本を抜き差ししていくと、書斎の本棚はゆっくりと動き出し、そこに隠し通路が現れた。
男がその通路を進んでいくと、やがて広い部屋に行きつく。
「さて……」
男はその部屋の中心にあった一冊の本を手に取った。
「まぁ、今回もこれで何とかしてしまえばいい。そのためにも、今回は——」
男は不気味な笑みを浮かべながら、作業を進めていく。
「ふぇっくしょい!!」
「大丈夫、ルース兄様?」
僕は、突然くしゃみをしたルース兄様に声を掛ける。
「あー……誰かが噂してんのかもなー……」
そう言ってルース兄様は鼻をすする。
「なんか、嫌な予感がするんだよな……」
「だ、大丈夫ですか?本当に?」
「まぁ、何とかなるだろ」
ルース兄様は、カラッと笑った。
「そう言えば、ヨツハ……さんってどれくらいのものを作れるんですか?」
「もう、呼び捨てでいいって、リック!……ん~……」
「恥ずかしいんですよ……」
ヨツハは目を閉じて、じっと考え込む。
「うん、そうだね~……あ~……」
ヨツハは、困ったような顔になる。
「どうしたんですか?」
「……限界が無い?」
「え?」
「魔力さえあれば、私の世界で存在しえなかった物すら再現可能だよ、タ〇コプターとか」
「タケコ〇ター?」
「空想上の道具」
「……そ、それはすごいですね……」
〇ケコプターが何なのかはよく分からないが、空想上の産物まで生み出せるのは、とんでもないことだと思う。
「まぁでも、そこまで行くためには今は魔力が全く足りないんだけどね」
「いったいどのくらい足りないんですか……?」
僕がそう聞くと、ヨツハは指折り数え始めた。
やがて、計算が終わったのか、ヨツハはそっと僕の耳に口を寄せる。
「あと10が10個ぐらい足りない……」
「え……」
あまりにもな量に、僕は絶句してしまった。
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