告白
僕は、それを眺めていることしかできなかった。
それを見ていたルース兄様。
「ねぇ、リックお兄様。いいんですの?」
「ん?何がです?」
僕は、誤魔化すように答える。
それを見たルース兄様は、苦笑する。
そして、僕の背中を叩いた。
「ほら、行け。今いっとかないと、絶対後悔するぞ?」
……僕は走り出した。
脇目も降らずに。
「待って!!」
幸いにも、ヨツハはまだ家の門の前にいた。
僕の声に振り返るヨツハ。
「どうしたの?」
「え、えっと……」
ヨツハを前にして、言葉が止まってしまう。
ヨツハは、何なのかよく分からない、と言った感じで首を傾げる。
僕は、精一杯の勇気を振り絞って、言葉を紡ぐ。
「そ、その……好きです!その聡明さも、元気なところも。ど、どうか、僕と、婚約してくれませんか!?」
「……え」
ヨツハは驚きを隠せない、と言った表情をしている。
少しだけ顔を赤らめ、嬉しそうにしているというのは、僕の勘違いじゃないならうれしい。
「えっと……」
「……ダメならダメで、大丈夫です」
僕がそう言うと、ヨツハはじっと僕を見る。
「……私も……」
「……」
「私も、リック君の事が嫌いじゃないです。だけど、リック君は貴族に戻るんでしょ?私は貴族でもなんでもないし、こんなよく分からない人間を婚約者にするなんて、ダメじゃない?」
「……大丈夫です!だって、僕は公爵家の人間なんですよ!誰にも文句は言わせません!」
「……本当にいいの?」
そう、不安そうに言うヨツハに対して、僕は力強く宣言する。
「僕の隣を歩いてほしいのは、ヨツハさんです!」
そう僕がヨツハに言うと、ヨツハは頷いた。
「……分かった。不束者ですが、よろしくお願いします!」
ヨツハは、一旦公爵家の方に戻ることにしたらしい。
「とりあえず、挨拶しとかないと!」
ヨツハは鼻息荒く、何が何でも僕との婚約を認めてもらう、と意気込んでいた。
家に戻ってくると優しい目をしたルース兄様と、キラキラした目をしたミケアが待っていた。
「やっとくっついたか?」
「これでヨツハさんがお姉様です!!」
そんな事を言われてしまい、ヨツハはきょとんとしてしまっている。
そこに、ルース兄様は言った。
「では、改めていらっしゃい。リックの婚約者として、俺は歓迎するよ。まぁ、あれこれが終わらないと手続きができないんだが……」
「私で大丈夫ですか……?」
「私は構いません!」
そうミケアは言う。
「俺も、問題ない。そもそも、リックやミケアに関しては、政略結婚させる意味がないと俺は思ってるし。あいつは知らないが……」
そう、どこか遠くを忌々しく見つめ、答えるルース兄様。
「それに、貴方には特異な力があるみたいだ。ねぇ、渡り人さん?」
そう言って、ルース兄様はいたずらが成功したような笑みを浮かべる。
「!?ルース兄様、ヨツハ……ヨツハさんの素性が分かったんですか!?」
僕がルース兄様に聞くと、ルース兄様はにやりと笑って説明する。
「あぁ。さっきの不思議な魔道具を見て確信したよ。数百、数千年に一度あるかないかという頻度で、こことは全く違う世界から迷い込んでくる生物がいる。まぁ、大抵は人なんだが」
ルース兄様は「場所を変えよう」と言って移動する。
僕たちも、それに従ってついていく。
ルース兄様が作業を行う書斎に移動すると、一冊の本を取り出した。
「まぁ、文献としても、一冊の本にあった程度なんだけどね」
そう言ってルース兄様はその本の表紙を僕たちに見せる。
「あっ、その本!」
それは、この前にハイント様が見せてくれた、伝承の本だった。
「この本に、どうやら異界の住人と交流した伝説があるんだよ」
ルース兄様は、該当のページを開いて、僕たちに見せてくれた。
その本には、『渡り人』と呼ばれた存在が村人と交流し、その後、村を脅かしていた竜を不思議な力で討伐したということが記されていた。
「まぁ、この本の中にある多くは眉唾物と言われているし、現代に竜は存在しない。だから、この物語自体が嘘だというのが、学説っていうのをミュリから聞かされていてね」
「でも、ヨツハさん。君は現代の魔法体系とは違う魔法を使えるね?君から貰った魔道具を見て、ピンときた」
ルース兄様は、面白い物を見つけてしまったとばかりに微笑んでいる。
「まぁ、手札は明かさない方がいいから、深くは聞かないけど」
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