毒見
——次の日。
僕は、研究所に足を運んでいた。
ハイント様が、来てほしいとのことだったのでちょうどいいタイミングであると思ったのだ。
「やぁ。リック君。女の子を拾ったんだって?」
「……拾ったんじゃありませんよ。助けたんです」
「まぁ、面白くなりそうだから、私としてはゆっくりと見守ってあげたいねぇ……」
「……?」
ハイント様が言っていることはよくわからなかった。
「あ、そうです、ハイント様。ちょっと見てほしい物があって……」
「なんだい?」
ハイント様が興味を持ったので、僕は持ってきた箱から例の物を取り出す。
「その、知り合いが貴族専門の菓子を作る仕事に就こうと思っているんですが、ハイント様に食べていただいて、感想をいただきたいのです」
「ほう……」
ハイント様は、顔に手を当てる。
「なるほど、あわよくば、広告塔になってほしい、と?」
「……そういうことになりますね……」
これは、ヨツハが提案したことだ。
僕が、今日、ハイント様と会う話をした時、ヨツハは目を輝かせて、「それよ!」と言っていた。
ヨツハみたいな新参者が、こういった事業を始める時には、やっぱり有名な人や偉い人に広めてもらうのが、一番手っ取り早く、お客さんを稼げるそうだ。
『まぁ、それに見合う実力が無ければ、無視されて終わりだけどね……』
ヨツハは、少し悔しそうな感じで言っていた。
ヨツハには、何かあったのだろうか?
『気にしないで!しがないクリエイターの悲痛な叫びだから……』
そう言ってヨツハは笑っていた。
……話を戻そう。
ヨツハがそう言って提案した、ハイント様に作ったお菓子を食べてもらう事。
無理はしないようにと言われたが、ぜひとも成功させたい。
『相手は貴族だからね。そりゃ、暗殺とか、そういう事の危険性もあるし、信頼性の問題もあるし、無理だったとしても気にしないよ』
「さて、どうしようかしらね……」
しばらく考えていると、ハイント様は何か思いついたのか「そうだわ!」と言って、「ちょっと待っててね……」と部屋を後にする。
それから待つこと数分。
ハイント様は、研究員の人たちを何名か連れて戻ってきた。
「あの、ハイント様、その人たちは一体……?」
「しょ、所長!その子が今研究所内で噂になっている……?」
「ええ、そうよ。今日は、ちょうどいい機会でもあったし、とりあえずあなたたちを呼んだの」
そう言って、ハイント様は僕に向き直る。
「リック君。紹介するわ。彼らはこの研究所で『毒』に関する魔法の研究を行っている人たちね。そして、彼女がその部署のリーダーの……」
「ベルノ・トキシックです!よろしくお願いします!」
「あ、よろしくお願いします……それでなんでトキシック様がここに?」
「トキシックで構いません!あなたは私たちの神なんですから!」
「え?神様?」
僕がそう聞き返すと、ハイント様はクスクス笑う。
「いえ、リック君には、彼女たちの手伝いをしてもらおうと思ってるの」
「手伝い?」
「ええ。今の魔術研究は、消費魔力が多すぎてうかつに発動できない魔法がたくさんあるわ。そしてそのせいで研究が上手く進んでいない所も多いっていうのは、説明したわね?」
僕はハイント様のその言葉に頷く。
「はい!」
そして、ハイント様の言葉の続きを、トキシックさんが言った。
「そして、それはこの『毒』魔法研究でも同様です!結局、魔法のどの部分が『毒』に作用しているかが分からず、消費魔力を削減しようにも、うまくできていない魔法が多いんです!」
「そうなんですか……」
「でも、毒の魔法が完成すれば、毒を以て毒を制す!毒見なんかの作業でも、負担を大きく減らせるようになると思うんです!」
「……なるほど!それで今呼んだという事ですね!」
僕はようやく話がつかめた。
僕が出した食べ物に毒が入っていないか、調べるために呼んだのだ。
これだったら、明確に毒が入っていないことが証明できる!
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