倒れた少女
(異世界の少女視点)
——あれから、どれくらい経ったのだろうか。昼と夜が何回か過ぎたと思うが、頭が回らない。
食料はとっくの昔に尽き、今は気合だけで歩いている。
もう、いつ倒れてもおかしくない。
それでも歩いていられたのは、ずっと遠くに人工物が見えたからだ。
あと少しで街につける。
ただ、それだけの執念で私は足を動かしていた。
ポツリポツリと振ってきた雨も、今では雨脚を強め、大雨になっている。
そして、ようやく目的地に到達する。
遠くに小さく見えた人工物は、近くで見れば巨大な城門だった。
私は、なんとかその門の前まで到着する。
門には、大雨だからか、誰も並んでおらず、私はすぐに門の下まで行くことができた。
——ここまでくれば、誰かに助けを求められるはず。
そんな淡い希望は断ち切られた。
「たくっ!なんで俺がこんなちんけな仕事をしなきゃなんねぇんだよ!俺は伯爵の息子だぞ?」
「あ、あの……」
私は門番の人に何か食べ物をいただけないか尋ねようとした。
「あ、何だよ?面倒くさい。ほら、さっさと通れ」
「た、食べ物を……」
「あ?知らねぇよ。そんな事、知るか!さっさといかねぇと、俺に対する不敬罪で処すぞ!?」
ここにいるとまずいと、私は本能的に察した。
仕方なく、私は街の中に入っていく。
街の中も人気がまるでない。
おそらくいつもは活気があるのであろう道も、こんな雨では誰も通らない。
——あぁ。ここで終わっちゃうのかな……?
よく分からない場所で、独り朽ちていく。
そんな姿を想像し、私は気を失った。
(リック視点)
どうやら、倒れているのは少女だ。
一応、倒れている少女が起き上がって襲ってくる場合もあるので慎重に様子を確認する。
しかし、ここまで近づいても起き上がらない様子なら、そういった場合でもなさそうだ。
少女は外見が僕より年下で、ここら辺では珍しい黒い色の髪の毛だ。
「……あの、大丈夫ですか?」
僕は、おそるおそる少女の肩を叩く。
少女は「う……」と声を出すも、動く気配がない。
それに、異様に細い。
もしかして、しばらく何も食べていないのかな……?
少女は風前の灯で、今にも燃え尽きそうだ。
僕は、ふと、あの日の事を思い出す。
——僕が、父に捨てられた、あの日。
あの日も雨だった。
あの時の僕と、目の前の少女が重なる。
「……よし」
僕は緊急事態だから!と念じつつ、仰向けに倒れている少女の腹の下に手を入れて、持ち上げる。
当然、身体強化は併用している。
昨日から溜まった魔力は8000万ちょっと。能力を8倍にしても4000秒は持つ計算だ。
これなら、馬車まで余裕で運べる。
しかし、それにしても少女は軽い。
僕は気を失っている少女に励ますように声を掛けた。
「大丈夫、助けるから……!」
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