取り消しの目途と研究成果
「よっしゃあ!リックを貴族に戻す目途が立ったぞ~!」
と、ルース兄様がガッツポーズを取る。
「やれやれ。ルース君のブラコンぶりには驚かされるわい」
と少し疲れたような表情を浮かべるハイント様。
ルース兄様は、ピースサインを僕に向ける。
「おし!二か月!二か月でお前をラインスト家に戻せそうだ!」
「そ、そんなに早いんですか!?」
僕は開いた口がふさがらなくなる。
「あぁ。ミラベルさんと協力して、うちの親父を引きずり下ろすことにした。それが一番手っ取り早いし、何より、あちこちに利益があるからな!」
「ひ、引きずり下ろすって……」
僕がルース兄様の言い方に少したじろぐと、ハイント様が言った。
「まぁ、今のラインスト公爵は自領地に引きこもり、王都での社交をないがしろにしているからな。王都の防衛は公爵の義務であろうに、『ルースを防衛役としてそちらに在中させる』の一言だ。ルース君が稀代の魔力持ちだからってそれはあるまい」
とハイント様が肩をすくめる。
「だから、こうしてルース君に付く大義名分が生まれた以上、徹底的にやってやろう」
と気迫たっぷりに述べるハイント様。
「あ、はは……」
僕は、若干引いている。
「じゃあ、俺からは以上だ。『ラインスト家に危害を加えた』ってことで、その分の働きはお願いしますよ、ミラベルさん」
「もちろん。リック君は今後の魔法学の発展において無くてはならない人物じゃからな。私も全力で動くとしましょうか」
そして、話は終わり、昨日の反省から話し始めようとしたのだが……。
「あれ、ルース兄様、帰らないの?」
僕がそうルース兄様に聞くと、ルース兄様はカラカラと笑う。
「いや、せっかくここまで来たんだし、リックの活躍を目に焼き付けておきたい」
「「「……」」」
そして、反省を行い、少しの実験を経て、ハイント様の研究結果がまとまってきた。
身体強化の魔術は消費魔力量が一万を超えたあたりから、段々と強化倍率が爆増していき、二万でおよそ8倍、三万ではおよそ20倍になっていくことがわかった。
十万もの魔力を使用した際の倍率は、馬力が高く、正確な値を求めることは難しかったが、本来の能力の10000倍の出力は優に越していることは予想がついた。
「なるほど。そりゃあ、自分の身体能力の10000倍の力で暴れたら、一騎当千の役割なんぞ、簡単に果たせるという訳か」
「……これは面白いですね。実際にあった史実が真実味を帯びてきた、という事ですから」
「身体強化って、意外に強力な魔法だったのね。……まぁ、消費魔力は到底普通の人には無理だけど」
「普通の人どころか、これを今現在使いこなせるのって、リックぐらいじゃないか?」
「え?」
「確かに、一万以上の運用では、リック君しか現実味がないな。ルース君ですら、一分持つか怪しいのに」
「ひどいな、ミラベルさん。俺なら一分程度だったら使えますよ。……まぁ、今後一章魔法が使えないこと前提に、ですけど」
「そりゃあ無理な相談じゃな」
「「はっはっは!!」」
「ミュリエルさん、あそこで高魔力の二人が笑っていますよ」
「リック君。貴方もあっち側」
ミュリエルさんは、笑いあう二人を冷めた目で見ている。
「あ、リック、今日は一緒に帰ろうか。もういいだろう、ミラベルさん?」
「あぁ。問題ない。後はこの結果をまとめて発表するだけだからな。この結果が今後、どんな魔法の発展を生むのか、少し楽しみじゃ」
そう言うと、ルース兄様がこちらに歩いてきた。
「よし、じゃあ帰るか!ミケアにもこのいい知らせを教えてあげないとな!」
「あ」
僕は途端に声を上げた。
「どうした?」
「ミケアに僕が超高いところから落ちたこと言ってませんでした……」
「……そりゃあまずいな。一週間は口をきいてもらえないぞ?」
「……全力で謝ります」
「おう。じゃあ急ぐか!ミュリ!埋め合わせは今度絶対するから、楽しみに待っていろよな!ミュリの大好きなマカロン、たくさん用意しとくよ!」
「もう!ルースがたくさん用意するから、こっちは食べすぎちゃうんですよ!?」
ミュリエルさんがそう言うと、ルース兄様は笑って言う。
「大丈夫!俺はミュリが太くなっても愛してるぞ!」
「もうっ!!」
バシンとミュリエルさんの張り手がルース兄様に飛んだ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
もしよろしければ、下の☆で評価をしていただけると嬉しいです!
ブックマーク・コメント等も大歓迎です!
あなたの読書人生に良い本との出会いがありますように!




