強制帰宅
「本当にすまなかった!!」
「いえ、大丈夫ですって。こうして命は助かっているわけですし」
僕は、全力で謝ってくるハイント様とミュリエルさんに対して、腰が引けていた。
「私の見識が甘かった。まさか、十万であそこまで高くなるとは……!」
「そうですね……」
ハイント様は顎に手を当てて、さっきの実験結果を振り返っている。
「本当に、反省すべきことだったよ。消費魔力だけが問題であるとずっと思いこんでいたからね……」
十万の魔力を使い、高い高い空へと飛び出した僕は、マジッカー・クリッカーを使い、なんとか地上まで身体強化を切らさずに落ちた。
僕の予想通り、十万の強化は着地に耐えうるような強化であった為、こうして無事でいられるのだ。
「もし、リック君が亡くなっていたら、君の兄と妹に顔向けができなかったよ。もっと違う方法で実験をしていれば、こうしたことにならずに済んだのに……」
「……もう、済んでしまったことなので、構いませんよ。やってしまったことを後悔するより、同じことを二度と繰り返さないようにするのが、研究者としての務めじゃないんですか?」
僕はうなだれるハイント様を止めようと、そう言う。
「……そうだな。君の言う通りだ。私たちとしても、二度とこういったことが起こらないように、きちんと研究すべきだな」
「……はい。そうですね、母様」
そこまで言うと、ハイント様は真剣な顔になって僕を見た。
「……そうだな。リック君。今日のくりっく分は終わってしまったのだろう?」
「はい?そうですけど……」
「なら、今日は帰って良い。あんな経験したんだ。疲れも溜まっているだろう」
「え、そんな!?僕は大丈夫で——」
「それからもう一つ君にお願いしたいことが有る」
僕が帰るのを拒否しようとした瞬間にハイント様が遮るように話しかける。
「君の兄、ルースに話がしたい。手紙だと少し時間がかかるから、君経由で口頭で頼めるか?日時はそちらが指定していい。明日、返事を聞かせてもらえると助かる」
「……分かりました。とりあえず戻って兄様に話を聞いてみます」
家に帰らされる口実まで作らされたのだったらもうどうしようもない。
僕は、渋々家に戻った。
——家。
「おう、どうした、ルース。今日は早いな!」
ルース兄様が不思議そうに聞いてくる。
「実は——」
僕は研究所であった事の一部始終を話す。
ルース兄様は、真剣に聞いていたが、最後まで聞き終わると、ふぅ、とため息をついた。
「なるほどな。話は理解した」
ルース兄様は、若干不機嫌そうだ。
「る、ルース兄様?だ、大丈夫ですよ?僕、無事ですし……」
「リック、話はそういう問題じゃないんだ」
ルース兄様は、じっと僕を見る。
「いいか、リック。これは言ってしまえば、『ハイント家が、ラインスト家の重要人物を殺害一歩手前まで導いた』ということだ。お前が云々言って何とかなる問題じゃない。分かるな?」
「で、でも……僕が考えなしにやったからで——」
僕が言い返そうとすると、ルース兄様は手でそれを止めた。
「確かに、リックは今現在、ラインスト家の所属ではない。しかし、俺が目に入れても痛くない人物として扱っていることは、向こうも重々承知のはず。それなのに、このような仕打ちを行ったという事には、落とし前を付ける必要がある。そうだな?」
「……はい」
ルース兄様の有無を言わさぬ物言いに、僕は頷くしかできない。
——ごめんなさい、ミュリエルさん、ハイント様……。
僕がそう思っていると、それまで怖かったルース兄様の顔が緩んだ。
「まぁ、でもリック、お前は気にしてないんだろ?」
「……う、うん……」
僕がそう言うと、ルース兄様はニコリと笑った。
「まぁ、当事者が気にしていないことを外野がやんや言うなんて、貴族の面倒くさい週刊みたいなもんだからな。気にするな。それに、これは向こうにも利点のある話ではあるんだ」
「……え?」
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