来訪者
――カランカラン
ドアを開けると聞き慣れた涼しげな音が鳴る。
「…やっと会えました。」
「おー久しぶりだな、ヤマト。」
俺は客の少ない時間を狙って来た。
「ダウビンさん、どうしてずっと避けてたんです?」
「別に避けてたわけじゃないが…とりあえず座れよ。」
ダウビンさんに案内されて席に着く。一息ついて俺から話を始めた。
「…なるほど、あの後そんなことがあったのか。」
俺はダウビンさんと別れた後から今まであった出来事を全て話した。
「ほんと、なんで突然居なくなったんですか?」
突然姿を消したダウビンさんに疑いの目を向けていた。けれどそれだけではなく、親と離れたヒナのような気持ちが心の片隅にあった。
「仕方なかったんだ。…俺もお前のように消されるかもしれなかったから。」
「…え?まさか…」
「そうだ。俺もお前と同じ、異世界からの来訪者だ。」
驚きと同時にやっぱりか、という納得する気持ちもあった。
ダウビンさんは俺を助けた理由は『物語が始まらないから』と言っていた。まるで俺が何者か知っているような言い方だった。
「そうだったんですね。だから俺を助けてくれたのか。」
するとダウビンさんは俺の心を見透かしたかのように手を伸ばした。
「そんな顔するな。俺がお前を助けたのは…なんだかほっとけなかったからだよ。」
そう言いながら俺の頭を撫でた。いつもは髪の毛がぐしゃぐしゃに絡まるほど強く撫でるけれど、今日はガラスを触るかのように優しく撫でた。
「子供扱いしないでってば……」
口を大きく開けて笑うダウビンさんを見て安堵する。
「あれ…?お前、なんか小っちゃくなった?」
「はぁ!?なってません!」
「はははっ!冗談だよ。」
「まったく、こういう所は相変わらずですね。」
「褒めてるのか?」
そんな話をしているうちに日が落ちていた。
こんなに時間を忘れて話せたのはいつぶりだろうか。またこの人とこうやって話すことができてよかった。
「気をつけて帰れよ。」
「はい。今日は突然なのにありがとうございました。それではまた。」
「…ヤマト!」
呼び止められ、ピタリと足を止めた。
「また来いよ。」
俺は手を振り、再び歩き出した。
いつもの商売人で騒がしい道を通っていると、ふと気になった。
「そこのお兄さん!こちらのB級魔石はいかが!」
そういえばヒビの中に入る時、ハユンが持ってた魔石を使ったな。
「あの、魔石って色んな効果があるんですか?」
「もちろん!こちらの魔石は使用者の体力回復効果があるんですよ!それにこっちのB級魔石は変化の効果があります!」
そんなに沢山種類があるのか…だったら幾つか持っておいて損はないな。
「じゃあそれください。」
「お買上げありがとうございます!!」
売人が言っていた魔石にプラス使えそうな物を幾つか買っておいた。
なかなかの値段だったな。ま、生前では比べ物にならないくらい給料高いからいいけど。
あ、そうだ!アンナさんにお見舞いのお菓子買っていこう。アンナさんはチョコレートが好きだったよな。
近くにある人気のチョコレートが売ってる店で買おう。
ピンポーン
「ヤマトさん!どうしたんですか?」
「これ、よかったらどうぞ。」
「わー!ここのお菓子食べてみたいなって思ってたんです!嬉しい、ありがたく頂きます!」
「喜んでくれたならよかったです。」
アンナさんは紙袋の中の箱を見つめながら喜びが溢れていた。
「傷の具合はどうですか?」
「もうだいぶ良くなりました。肩も動かせます。」
「それならよかった。」
確かに前に比べたら肩が上がるようになっていた。大きな怪我じゃなくて本当によかった。
「じゃあ俺はそろそろ戻ります。お大事に。」
「はい。ありがとうございます。」
そうして俺は自分の部屋に戻った。




