守られる存在へ
「何してんだこの変態野郎!こっちは病人だぞ!?」
「…見てみな」
そう言ってハユンは俺の体を指差した。
不思議に思いながら視線を自分の体に落とす。
「…な…なんだこれ!?」
なんと体に亀裂のようなものがはいっていた。
それは街中を苦しめたあのヒビと似ていた。左胸の心臓辺りから鎖骨までヒビが入っていた。
「これはなんだ…?体が痛む原因はこれか?」
「帰ってきた日、服が汚れてたから着替えさせようと脱がしたときに気づいたんだ。」
どうしてこんなことに…。
俺は戸惑いを隠せなかった。
「ヤマトくん…まだ本調子じゃないのにこんなこと聞くのはよくないが、あの時何をしたのか教えてくれないか?」
出会った頃では考えられないな。あのハユンが気を遣うなんて。
「…呼び捨てなのか君ずけなのかハッキリしないですね。」
「あ…ははっ、ヤマトくんで慣れてたから無意識に呼んでしまったよ。」
「俺はどっちでもいいですけど。」
異能が発現したこと、言っておいた方がいいよな。でもどこまで話すべきだろう。
審判に異能を貰った…とは言わない方がいいか。
「俺、異能が使えるようになったんです。」
「異能を?」
「はい。あの時、城が揺れだしたときに突然発現しました。」
「その異能の力で私達を脱出させてくれたのか?」
「そうです。抽象的なもの同士を繋ぐことができる能力です。」
「抽象的…なるほど、それであの場から入口に繋いだという訳か。」
俺はハユンの顔色を伺う。
「俺が異能を使えるようになったのにあまり驚かないんですね。」
するとハユンは顔の力が抜けたように穏やかな顔で笑った。
「驚きはしたが、私の仲間に能力者が増えるということは喜ばしいことだ。それに、これで少しはヤマトくんも自分の身を守れるだろう。」
俺が能力を手に入れることで保護対象から外れるかと思ってたけど大丈夫そうだな。
「治療の異能を持つ医者に診てもらったんだが、原因がわからなかったんだ。医者によると亀裂から莫大なエネルギーを感じたらしい。」
「莫大なエネルギー…」
ハユンは目を細めて口角を上げ、すっと顔を近づけた。
「…あの時何かしたのか?」
「心当たりがないことはない…です。」
「話してくれないか?」
まぁ別に隠すようなことはないし、話してもいいか。
「少し気がかりなことがあったんです。脱出する直前に『このままここを出ても何も解決しないんじゃないか』って。」
俺の話を真面目に聞くハユンを見て、ほんの少しだけ温かみを感じた。
「それで思ったんです。ヒビの空間自体を俺の中に繋いで閉じ込めればいいんじゃないかって。」
「でも君の能力は抽象的なもの同士を繋ぐんだろう?」
「俺は異世界から来た"異質"だってウィンドウに表示されたんです。抽象的と言えるかはわかりませんが、試してみる価値はあると思ってやってみたら成功したってことです。」
説明を終えるとハユンは深くため息を吐いた。
「なんですか?」
じろりと睨みつけると、俺のおでこにハユンは指をくっ付けた。
「どうして君は後先考えずリスクを犯すんだ?」
「え?どうしてって…」
キョトンとした顔をする俺を見てハユンはまたひと息吐いた。そしてすぐにまた笑った。
「君には覚えてもらわなければならないことがまだまだあるな。」
数日後、熱は下がったが体の亀裂と痛みは癒えないままだった。
「痛っ…!」
少しでも動くと刺すような痛みが走る。けれどゆっくりなら動ける程度にはなった。
エネルギーが俺の体に馴染んできたのか?
身の回りの世話はスアンさんの部下の人がしてくれている。
俺は断ったのにスアンさんが引き下がらないから。
医者や看護師が定期健診をしに毎日部屋に来るから心が休まらない…
ピコン
「ん?………っ!!」
[スキル夜光眼発動 危険を察知]
["異世界からの来訪者"の修正に失敗しました。]
またスキルが発動してる!
「なんでだ…?」




