城の中のナイトメア(2)
「ハユンさーん、少し休憩しませんか…?」
「ヤマトくんは帰ったら体力をつけなくちゃな。それとも私が抱えてあげようか?」
「気持ち悪い冗談はよしてください。」
「冗談じゃないのに…」
皆と別れてからずーっと歩いてばかり。俺はハユンの少し後ろを歩いていた。
外は山に囲まれており、高い位置にこの城はあった。頬を撫でるように風が吹く。
「ヤマトくん、外に出てみようか。」
ハユンが指差す方向を見ると城を囲むかのように下へ続く階段があった。幅は狭く、1メートルほどしかなかった。
「風が強いから落ちないよう気をつけるんだぞ。」
「本当にここは一体何なんでしょうね。」
「まだわからない。だが、吸い取られたエネルギーでこの城はできているのかもしれない。」
「この城自体が?」
「今にも崩れ落ちそうな場所もあれば、造られたばかりのような綺麗な場所もあった。つまりエネルギー源を見つけてそれを壊せばATPは消えかもしれない。」
「でも…そうするとこの空間が崩れて俺達は帰れなくなるんじゃ…」
「その通りだな。だから無事脱出できる方法を考えないと。」
こんな巨大な空間を創るためにATPエネルギーを集めていたのか?わからない、創造主は何を考えているんだ。
階段を下りた先には長い廊下が続いていた。
気まずい沈黙の中、俺はずっと気になっていたことをハユンに問いかけた。
「ハユンさん」
名前を呼ぶとすぐにハユンはこちらに振り返った。
「どうして俺をギルドに引き入れたんですか?」
ハユンは微笑んでいるような、どこか力が抜けているような顔をした。
「…いつかは聞かれると思っていたよ。」
「ハユンさんはあの時、人手が足りないからと言っていました。けどいくら人手不足だからと言って全く役に立たない一般人の俺をハユンさんのチームにいれるなんて何か理由があるとしか思えません。」
本当は最初に聞くつもりだった。けどなんとなく、ハユンは俺が真実を知らないままここに居ることを望んでいるような気がして聞けなかった。
「…俺にとってヤマトくんは、守る対象だった。それだけだ。」
「守る対象…?」
「君は自分が思っているほど役立たずじゃない。君には価値がある。」
胸が締め付けられ、言葉に詰まった。俺に価値があるなんて、初めて言われた。会社員時代では無能だと上司に言われていた。今まで必死に積み重ねてきたものを認めてもらえたようで、なんだか泣きそうになった。
「…理解できません。」
「今はそれでもいい。でもきっといつかこの言葉の意味がわかる日が来るよ。」
そう言ってハユンはまた歩き出した。
ハユンの後を駆け足で追う。そして横に並んで涙ぐんだ目を誤魔化すように揶揄った。
「ハユンさんって本当は自分のこと俺って言うんですね。」
「あ…ははっ、そうだな。たまに癖で言っちゃうんだよ。」
この時俺は会社でこき使われていた頃をおもいだした。あの死にそうだった日々では考えられないな。1度死んでその先で仲間ができるなんて。
なんだかメンバーの皆に会いたくなってきたな。
「そういえば私もヤマトくんのことヤマトって呼んでもいいか?」
「え?なんでですか?」
「スアンやイーゼンはいつの間にかヤマトって呼ぶようになってただろ?私だけ仲間外れみたいじゃないか。」
そういえば、確かにスアンさんは敬語でヤマトさんだったのにいつの間にかヤマトって呼んでたな。
心を許してくれたってことかな…嬉しいな。
「アンナさんはヤマトさんって呼んでますよ?」
「アンナはヤマトくんより年下だからな。」
「何歳なんですか?」
大人っぽいから俺と同い年か少し上くらいと思ってたな。
「少し前20になったばかりだ。」
「俺の1つ下だ。」
「アンナは初めて未成年で異能が発現した優秀なメンバーなんだ。」
「へ〜すごいなアンナさん。」
「あ、そろそろ1時間経つな。待ち合わせ場所に戻ろうか、ヤマト。」
悪戯っぽい笑みで俺の名を呼んだ。
「許可した覚えはないんですけど」
ここへ来る前より少し縮んだ距離感で俺達は仲間の元へ急いだ。




