城の中のナイトメア(1)
「ここに…入るんですよね。」
アンナさんが震えた声で言う。
「これで入った瞬間生気吸い取られてる終わりとかなったら責任持ってリーダーの寿命くださいよ。」
「周辺のエネルギーは吸い取るのに市民の体になにも害がなかったんだ、それはないだろう。」
現場に到着したはいいが、緊張で手が震える。しかし他のメンバーは平気そうだった。
異能者はこういう緊張に慣れてるのか?
「では、改めて確認しておくぞ。私の掛け声に合わせて全員同時に飛び込むんだ。予め買っておいたこの魔石の力で一瞬だけ空中に浮くことができる。タイミングがズレると落ちてしまうから気をつけるんだぞ。」
「わかってますよリーダー。」
「スアン、君が一番心配だな。」
スアンさんはハユンをじっと睨みつけた。
「どういう意味ですか。」
「そろそろ行こう。皆準備はいいか?」
『はい!』
ハユンは持っていた魔法石をヒビがある位置まで投げた。それと同時にハユンは掛け声を言う。
「せー…」
すると投げた魔法石に吸い込まれるかのように全員の体が宙に浮いた。
パリン!
魔法石は勢いよく割れて星のように輝き散った。
『のっ!』
そして俺達の体はヒビの中へと消えた。
「―――と……ヤマト!」
誰かの呼ぶ声に目を覚まし、バッと体を起こす。
「あれ、ここは…」
「大丈夫ですか?ヤマトさん」
アンナさんが心配そうな顔でこちらを見ていた。
「大丈夫です。それより全員無事だったんですね。」
「ほんとよかったー。リーダーの言う通りだったね。」
周りを見渡すと、そこは城の中だった。外は霧に包まれている。
ぐるりと辺りを見渡しているとハユンが先陣を切る。
「とりあえず城の中を探索しよう。」
コツコツ――
五人分の足音が広い城内に響き渡る。
「にしても広いですね。ヒビの中がこんなだったなんて…」
ヒビの中はブラックホールのような何も無い空間なんだと思っていた。それがこんな神秘的な空間が広がっているなんて…とても不思議な気分だった。
情景が変わるほど歩いたその時、ハユンが足を止めた。
「足元に気をつけろ。水が張っている。」
ハユンの言葉に俺も足を止める。足元を見ると薄く水が張っていた。
「城の中なのに何で水が…」
「アンナ、おんぶしようか?」
スアンさんの真剣な言葉にアンナさんは顔を赤らめる。
「このくらい自分で歩きますよ!」
「そう?」
「水位は低いですしそのまま進みましょう。」
そう言ってイーゼンさんが先に足を踏み入れる。それに続いて俺達も進む。
足が水に触れる度に波紋が広がる。歩いても歩いても特に変わったことは何もない。
奪われたエネルギーは一体どこへ行くのだろうか。
「何も無いな。それに城が広すぎる。」
途方に暮れていたところでイーゼンさんが提案する。
「三手に分かれて捜索するのはどうですか?」
このまま全員まとまって探すよりも分かれて探す方が効率がいい。
「その方が効率いいかもですね。」
「私アンナとあっちの方見て来ます〜」
「じゃあスアンとアンナがペア、私とヤマトくんがペア。イーゼンは一人でも大丈夫だろ?」
「はい。一人の方が楽ですから。」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!何で俺がハユンさんとペアなんですか?!」
こいつと二人きりなんて嫌に決まってる!!
「ヤマトくんはよわ…一人にすると心配だからな。」
今弱いって言いかけたな。
「それじゃあ俺は右側を捜索します。」
「わかった。全員一時間経ったら必ずここへ戻ってくること。いいな?」
『了解』
そうしてそれぞれ分担された場所を捜索することとなってしまった。
「じゃ、私達も行こうか。」
ハユンは頬を緩めて微笑みながら顔を覗き込むが、俺はわざと顔を逸らした。




