危機察知(3)
木漏れ日が差し込み、滴がガラス玉のように輝く。雨上がりの湿った土の匂いが心を落ち着かせる。
「雨、止みましたね。俺はもう行きますね。」
そう言ってそそくさと去ろうとすると、男に腕を捕まれて引き止められた。
「シェイド。俺の名前、覚えておいて。」
揺れ動く灰色の髪と吸い込まれるような深い瞳に目を奪われる。
「…ヤマト」
何故か自然と自分の名を口にしてしまった。
「また会おう。ヤマト」
名前、教えてしまって大丈夫だっただろうか。
シェイドは俺の行き先とは違う方向に歩いていった。なんとも言えない不思議な男だった。
水が跳ねないよう優しく地面を踏む。また雨が降らないうちに早く帰ろう。
「あ!おかえりヤマトー。遅かったね。」
笑顔で呑気そうなイーゼンさんの顔を見ると、今日一日の疲れが一気に押し寄せた。
「いやいや…店遠すぎですよ!それに途中で雨降ってきたから雨宿りしてたんですよ!」
「そうだったのか?悪かったよ。それ、そのままリーダーのとこ持ってってくれる?」
一刻も早く風呂に入って休みたい。
「わかりましたよ…」
――コンコン
「失礼します。ハユンさん、お使い行ってきました。」
ハユンは椅子に座って大量の資料を読み漁っていた。
「あれ?イーゼンに頼んだんだが…ヤマトくんが行ってくれたのか。ありがとう。」
「はい、どうぞ。ここ置いときますね。それじゃ失礼しましたー」
頼まれた物を机に置いてさっさと部屋に戻ろうとすると、ハユンに引き止められた。
「なんだか疲れた顔をしているね。」
「当たり前ですよ。片道40分以上歩いたんですから。」
あんたと話してると余計疲れるから早く部屋に帰してくれ…なんて言えるわけない。
「お礼に晩御飯奢るよ。」
忘れていたが相手は世界最強のギルドマスターだ。失礼のないように笑顔で丁寧に…
「いえ、結構です。それではさよなら!」
バタンッ
「…振られちゃった。」
「あーー気持ちいい〜」
沢山歩いて汗かいて入る風呂が一番気持ちいい〜…
最近忙しくてシャワーだけの日が多かったからなー。
そういえば危機察知が反応してたけど結局何もなかったな。
『また会おう、ヤマト』
…いや、もう会うことはないだろう。
スキルにも誤作動というものがあるかもしれないしな。まだここへ来たばかりだ、何が起きてもおかしくない…と思おう。
前世で仕事してた時もパソコンの不具合でデータ飛んだりしてたもんな。あの時はめっちゃ焦ったなー。
のぼせないようそろそろ上がるか。
『速報です。昨夜から謎のヒビでによる被害範囲が急速に広がっています。市民の皆様は危険区域に絶対に侵入しないようにしてください。』
今までヒビの巨大化は収まっていたが、突然事は動き出した。そのためメンバーを集めて緊急会議が行われた。
「ヒビ発見当時から調べていたが、未だにあれがなんなのかはわかっていない。」
ハユンが昨日忙しそうにしていたのはこれが原因だったのか。
スアンさんがハユンに向かって発言する。
「正体がわからない今はどうすることもできません。しかしこのままでは市民にまで被害が広がってしまいます。」
ここまで総出で調査しているのに正体がわからないなんて…審判に言われたこと皆に言うべきだろうか。
「その通りだ。どうにか対策を練らなければならない。そこで、今から現場へ行ってヒビの内部へ侵入しようと思う。」
衝撃の発言にその場にいた全員が口を揃えた。
『侵入!?』




