危機察知(2)
[スキル夜光眼発動 危険を察知]
「これは…」
―ピンポーン
突然インターホンがなり、ビクッと肩が跳ね上がる。そして足音をたてないようゆっくり扉へ近づき、ドアスコープを覗く。
「…イーゼンさん?」
ガチャッ
鍵を開け、ドアを開いた。
「こんにちは。どうかしましたか?」
するとイーゼンさんはニコッと笑って俺の顔の前にメモ帳のような紙を差し出した。
「おつかい、頼めるかな?」
「はぁぁぁぁー…」
大きなため息をつきながらズシズシと歩く。
「なんで免許持ってない俺がわざわざ行かなきゃならないんだよ。」
――20分前――
「はあ?おつかい?」
「実はリーダーが車の部品交換したいらしくて、その部品を買ってきてほしいらしい。」
「部品交換?」
「ほら、この前皆でヴィンさんを襲撃しただろ?ヤマトくんが銃で撃つ時落ちなかったのはうちの社員の磁力の異能者に魔力を注いでもらってたからなんだ。そしてその異能者に魔力チャージしてもらうと同時に古くなった部品を交換したいらしいんだよ。」
あの時の磁力は異能者の力だったのか。
「でも、どうして俺が?」
「スアンとアンナは今日オフだから出掛けてるんだよ。」
「じゃあイーゼンさんが…」
「俺は今から仕事。」
俺の言葉に被せて笑顔でそう答えた。
「なら本人に行かせれば…」
「リーダーは今忙しくてしばらくは手を離せないんだ。」
「キンスさ…」
「彼はリーダーの手伝いで忙しい。」
「…はぁ、わかりましたよ。でも俺免許持ってないですよ?誰か車だしてくれるんですか?」
「何言ってるんだ?歩きだよ、歩き。細いんだから少しは運動しないと。場所は携帯で送っとくよ。」
この世界に来てすぐでまだわからないことだらけなのに…道だって全然覚えてないんだぞ!
それにしてもさっきからなんか違和感…あ。
「そういえば、イーゼンさん眼鏡かけてましたよね?どうして今日はかけてないんですか?」
「ああそうか、初めて会った時から眼鏡だったね。実はコンタクトなくなってたんだけど、忙しくてなかなか買いに行けなかったんだよね。」
「そうだったんですね。」
普段はコンタクトだったのか。
「それで、話がズレたけど行ってくれるよな?」
断りたいところだけど、今日はなにも予定がないし断る理由がない…
「じゃ、よろしく頼んだよ。"ヤマト"」
そう吐き捨ててほくそ笑みながら去っていった。
――現在――
「ありがとうございました〜」
頼まれた物を購入し、ビニール袋片手に来た道を戻る。
くそっ、めちゃくちゃ遠かったじゃないか。40分以上歩いたぞ…
街を出た田舎町にその店はあった。わざわざこんな遠くまで来させるなんて嫌がらせとしか思えない…!
それにしても、さっきの危機察知が反応したのがどうも引っかかる。だから今日は外に出たくなかったのに。とりあえず真っ直ぐ家に帰ろう。
…ポツ…ポツ
「うわっ、まじか!」
突然雨が降ってきた。天気予報晴れだったのに。どこかで雨宿りしよう。
近くにあったパーゴラに駆け込む。ツルが絡んでおり、南の方向の雲の隙間から太陽の光が差し込む。ついさっきまで小雨だったが今は土砂降りだ。
あ、さっき買ったやつ大丈夫かな…
「…ついてないな。」
空を見ながらぽつりと呟いた。
「――雨すごいね」
声のした方に振り向くと、そこには先客がいた。
気配がなく、全く気が付かなかった。体が強ばるのを感じる。
「もしかするとなにか素敵な出逢いがあるかもしれない。」
「えっと…すみません、気が付かなくて。あなたも雨宿りを?」
そう言うとその男性は異様な笑みを浮かべてこちらを見つめた。
「ああ、そうだよ。」
あれ、それにしては服も髪も濡れていないような…
「雨が止むまでお邪魔してもいいですか?」
「もちろん、どうぞ。」
少し離れた場所に対面で座る。チラリと目線をあげる。
灰色の髪…染めてんのかな?
沈黙が流れ、冷たい空気が張り詰める。滴が地面に落ちて弾ける音が響き渡る。
早く雨止まないかな。
するとこの沈黙を破るように男は口を開いた。
「この髪、気になる?」
見てたのばれてた、なんて鋭い…焦って情けない声を出してしまう。
「いえ、その、まぁ…」
「何故か生まれつきこんな色なんだ。派手で目立つからあんまり好きじゃないけどね。」
「でも凄く綺麗ですよ。」
なんて言ったらいいかわからず、とりあえず褒めてみた。すると男は笑った。
「ふっ、ありがとう。」
雨の中輝く髪と瞳はまるで天使のような、悪魔のようにも見えた。




