血圧上昇
こうやってスーツを着ていると、働いていた頃を思い出すな。上司や同僚は元気にしてるかな。まぁ、特別仲の良かった人なんて職場にいなかったけど。
ピンポーン
あっ、来たかな?
「こんにちは。少し早すぎましたか?」
ドアを開けるとアンナさんが立っていた。
今日はアンナさんに会場まで一緒に行こうと誘われていた。
「いえ、俺もちょうど準備できたので。それよりもアンナさんドレス素敵ですね。すごく似合ってます!」
わずかに灰色がかったアイボリーの派手すぎないワンピースを着ていた。とても柔らかい印象でアンナさんにとても似合っている。
「そんな、ありがとうございます。ヤマトさんもスーツ似合ってますよ。」
そんな話をしながら8階にある会場までアンナさんと並んで歩いた。
「そうだ、アンナさん。今日はスアンさんの隣に座ったらどうですか?俺協力しますよ。」
少しからかうと、アンナさんは顔を真っ赤にして俺の肩をポンと叩いた。
「ヤマトさん!」
俺は思わずクスッと笑った。するとアンナさんは照れくさそうに笑った。
そんなこんなで会場へ着いた。中へ入るとハユンと初めて会ったパーティーほどでは無いが、沢山の人がいた。
初めて見る人もいれば、何度か見かけたことのある人もいた。
会場の中心には長いテーブルがあり、その上に豪華な料理がずらりと並んでいた。
「今回は立食形式のようですね。」
入口からぞろぞろ人が入ってくる。ハユンはまだ来ていないようだ。
「あ!」
後ろの方から声が聞こえ、振り向く。
「あ、スアンさん!」
「こんにちは、ヤマトさん、アンナ!ヤマトさんスーツ素敵ですね!」
「ありがとうございます。スアンさんもすごく素敵です。」
スアンさんは紺のスラックスに、真っ白なブラウスの上からジャケットを羽織っていた。
「スアンさん、かっこいい...!」
アンナさんはキラキラした目でスアンさんを見ていた。
「ア、アンナ...」
スアンさんはアンナさんにゆっくり近づき、バッと抱きついた。
「アンナ可愛いー!ドレス着てるの久々に見た!本当に可愛いぃぃぃ!!」
アンナさんのヘアセットを崩さないよう、頬をすりすりしている。
「スススススアンさん...!!あっ、う、あの...あぅ...」
今まで見た事ないくらい顔を真っ赤にしてアンナさんは固まっていた。顔から湯気が出そうだ。
微笑ましい光景に心を和ませていると、アンナさんの鼻から血が垂れ、会場がざわめきだす。
「アンナさん!?」
「アンナ!大丈夫!?」
アンナさんはふにゃふにゃした顔で言った。
「だっ大丈夫です...もう死んでもいい...」
「いやいや死んじゃだめですよ!!ティッシュで鼻抑えて!」
「アンナぁぁぁぁ!」
3分ほどでアンナさんの鼻血は止まった。
「はぁ...びっくりした。大丈夫ですか?アンナさん。」
「はい、もう大丈夫です。ご迷惑おかけしました。」
「よかったよアンナー!」
スアンさんはずっと心配そうな顔でアンナさんを見ていた。
「ああ、スアンさん、かっこよすぎます...」
スアンさんに抱きつかれて血圧上がったのかな...。でもすぐに止まってよかった。
時計を見るとちょうど針が17時を指す。司会者がマイクを手に挨拶を始めた。
『本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。仲間と共に日々の疲れを癒し、おいしい料理を囲んで楽しいひと時を過ごしましょう。』




