消せない記憶(2)
「貴方は一体、何者なんだ…?」
「言っただろう?今言えるのはこれだけだと。」
その後、ハユンと共に夕食を食べたが、ハユンは俺が何を聞いても俺の欲しい答えはくれなかった。
「もう時間も遅いし、私が送ろう。」
「ありがとうございます。」
そうして部屋を出ようと立ち上がると、コンコンとノックが聞こえた。
「入れ。」
「失礼します。ハユンさん、ヤマトさんは私がお見送りしますよ。」
「そうか?悪いな。」
入ってきたのは、身長の高いスラッとした女性だった。
「この方は?」
「私の部下のスアンだ。彼女がお店まで送ってくれるそうだ。」
「わざわざありがとうございます。よろしくお願いします。」
「頼んだぞ、スアン。」
「お任せ下さい、しっかりお届けいたします!」
車に乗り込んでシートベルトを締める。スアンさんの方をチラリと見ると、長い前髪をかきあげて暑かったのか袖をまくる。
わぁ、スアンさん腕の筋肉すごいな。俺よりもあるんじゃないか?さすがハユンの部下だけあるなぁ。
「では出発しますね〜」
エンジンを始動し、シフトレバーを切り替える。そしてアクセルペダルをぐんと踏んだ。その瞬間車は勢いよく発車した。
「うわっ!」
なんて荒い運転なんだ!ハンドルを切る事に体が左右に揺れる。
「ちょちょちょスアンさん!」
「どうかしましたか?ヤマトさん。」
「もうちょっと安全運転でお願いします!」
「え?安全運転してますよ?」
これのどこが安全運転だ!その後も勢いはなくなることなく、吐く寸前でお店に着いた。
「あ、ありがとう…ございました…」
げっそりとした顔でお礼を言う。
「いえいえ!またいらして下さいね!」
スアンさんは凛々しい顔をしている。スアンさんはすごく美人だけど、なんというか…
「かっこいいですね。」
「…えっ?」
あっ、女性にかっこいいなんて、嫌な気持ちになる人もいるよな!
「いやっ、そのっ!すごく男前というか…なんというか…」
スアンさんは少し頬を赤らめ、照れているようだった。
「そっそんな、かっこいいだなんて、もぉ〜ヤマトさんったらお世辞が上手いんですね!」
あれ?なんかすごく喜んでる?とにかく傷ついてなくてよかった。
「お世辞じゃないですよ。男の俺よりずっとかっこいいです!」
スアンさんは嬉しそうな顔をしながら俺の肩をバシバシ叩いた。
「そんなことないですよ〜ヤマトさん、次うちのギルドに来たときまたお話しましょうね!」
「もちろんです。また近々お伺いしますね!」
そしてスアンさんはまた車に乗って去っていった。なんだか不思議な人だったな。
次の日の昼、お店宛に1つの荷物が届いた。宛先は不明だった。20cm程の小さなダンボールを開けるとさらに2回り程小さな白い箱があった。蓋を開けるとそこには1枚のメモと、さらに1回り程小さな物が入っていた。
「こ…これは…スマホ!?」
やっぱりこの世界にもスマホあったのか!でも誰から…?同封されていたメモを手に取る。
「『プレゼント喜んでくれると嬉しいな』…これはもしや…」
スマホの電源をつける。アプリや設定などは全て済まされていた。電話帳を開くと…あ!やっぱり!1人だけ電話番号が登録されていた。
プルルル…プルルル…プツッ
『もしもし。プレゼントは受け取ってくれなかな?』
「やっぱり貴方ですか、ハユンさん!」
『これから連絡を取れるものがないと困るだろうからな。』
「だからってこんな…いいんですか?」
『もちろんだ。それと昨日聞き忘れたんだが、スマホの代わりに…私のギルドに入ってくれないか?』
「またその話ですか。俺が入ったところで貴方になんのメリットが?」
少しの間をあけてハユンは話し出す。
『…今対立している2つのギルドが人員を増やして勢力を広げているんだ。私も負けれいられない。だから少しでも人員を増やしたいんだ。』
ん?でも昨日は…
「昨日は俺の異能がどうとか言ってましたよね?」
『そうだな。君の異能に期待しているというのもあるし、昨日言ったように君の感情が爆発しないよう側で見ておきたいというのもある。』
「俺は大丈夫です。勧誘するならもっと強い人とかを勧誘してください。それでは。」
電話を切ろうとしたその時。
『衣食住、生活に必要なものは全てこちらで用意する。』
「…いえ、間に合ってます。」
『もちろん給料も出そう。お店の店長にずっとお世話になっているんだろう?恩返ししたくないのかい?』
確かに、ダウビンさんに何か恩返しがしたい。…けど!こいつと一緒に働くなんてぜっったい…
「…よろしくお願いします!お世話になります!」
『嬉しいな。これからよろしく、ヤマトくん。』
バリバリ働いてダウビンさんに恩返しするぞ!
あ、スマホのお礼言い忘れてた。次会ったとき言うか。




