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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・帝都の英雄編
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70/74

/// 70.修行の日々とダンジョン探索

◆エルザード帝国・ノースダンジョン・481階層


「はー!」


アンジェの一撃を目の前の竜人は固い鱗の手の甲を巧みにぶつけ、いなしていく。

すでにアンジェにはすべての能力アップが付与されている。しかし中々決定打が出ない。付与というハンデをもらってもなおタイマン勝負で均衡する力。

何度かの打ち合いの後、ようやく相手の腕に星魔刀(せいまとう)が傷を付け、その一瞬の隙を突き、魔力を少し込めた(みずち)が肩口へとねじ込まれていく。傷ついた竜人、『リザードキング』はその次の首への一撃で倒しきることができた。


「うーん。まあ、こんなものか」


その戦いを見ていたベリービットが感想を漏らす。


アンジェは今、初めて足を踏み入れる500階層にも迫る場所へ、師匠となるベリービットに連れてこられていた。

参加メンバーはベリービット、ルビリアとローライトの双子ちゃんコンビの計4名でこの481階層へ臨んでいた。。

当初は英雄連合から他の女性が3名ほど帯同する予定であったが、ベリービットだけでも少しギクシャクしてしり、3人と顔合わせをした際には、ポンコツゴーレムのように固まってしまったため諦めてしまった。

その代わりといっては何だが、急遽双子ちゃんが参戦することとなった。


あの事件以降、前以上にべったりとアンジェに懐いた双子ちゃんたち。幸いあの事件によりレベルも能力もかなり上がっており、一緒に師事することで双子ちゃん自身も能力とは別の成長も期待できるだろうという思惑もあった。

そもそも、アンジェも双子ちゃんもスキルとしてはチートと言っても良いレベルだ。問題があるとしたらその戦闘経験の無さである。


アンジェはもちろん、双子ちゃんにしても魔物討伐はかなりの経験があるのだが、やはり年齢的な経験不足に加え、命のやり取りをするという場面には中々遭遇しないこともあり、ベリービット的にはまだまだ技術的にも精神的にも、もっと伸ばすことは可能だと感じていた。


そして最適な修行の場として選んだのはここ、ノースダンジョンの481階層であった。ここには、竜族でも亜種である竜人化したリザードキングが出現する。先ほどのようにタイマンの状況を作るのが手っ取り早い。

あれはかなり上級の剣術スキルに似通った動きでこちらの攻撃をいなしてくる。通常は多人数で囲み、魔法攻撃で怯んだ隙に討伐するものだが、こういった使い方もできる魔物であった。


そしてタイマンの状況を作り出すために、連合でいつも浸かっている人海戦術ではなく、ローライトが【城壁(ウォール)】で部屋の通路をぐるりと囲み、ダンジョン内に閉鎖空間を作るという作戦によるものであった。


ローライトのいつも以上のかなり強固な【城壁(ウォール)】を作り出すにあたって、英雄連合の所持している魔力強化のための超レアアイテム『魔導士の印(マジシャンズシンボル)』という髪留めを装着させている。

あくまで連合の所持品であり貸与中なのだが、これを付けながらキラキラした天使の眼差しを向けられているベリービットに、購うことができるかはまた、定かではない。


「しっかし前回の時も思ったが、やっぱり動きは速いだけで本当に素人なんだな」


ベリービットの言葉にうんうんと頷くアンジェ。

ベリービットはローライトに合図を送ると、一体のリザードキングを【城壁(ウォール)】内部に入れさせると「みとけ」といって、入ってきたリザードキングに向かってスタスタと歩き出した。


そしてリザードキングの爪を躱し、すれ違いざまに斜め下から脇を裂く。左腕が切り落とされる。奇声を上げながら突進をしてくるそれの右手の攻撃に合わせて軽く腕に触ったと思うと、次の瞬間には背後に回り込み首筋に剣先を突き刺していた。


「こうやって、相手の動きをよく見て最低限の力で切る。その動きができないとこっから先はいけない」


アンジェは今のベリービットの動きに魅了されていた。同じ強者でもエルザの動きは豪の拳と言っても良い。早いが何より圧倒的な強い力。少なくともアンジェの中ではそういうイメージだった。

対してベリービットの今の動きは流れるような静の剣。早さもそこまで感じない。でも結果的には立ち向かった相手は瞬時に狩り取られていた。

アンジェが求める理想像でもあった。


アンジェはしばらくその動きを脳内で反芻しながら、次から出てくるリザードキングを倒し続けた。


そしてアンジェの動きが少しだけ慣れたころ、ローライトの【城壁(ウォール)】は解除される。もちろんそれはベリービットの合図によるものであるが、突然のことによりアンジェは軽くパニックに陥る。

しかしその次の瞬間、広範囲に走るベリービットの攻撃により、半分のリザードキングはその命を終わらせる。

そして残り半分のリザードキングについては、ローライトの多数の【(へき)】による障害により動きを制限している中、再びルビリアにより全付与されたアンジェが必死に押しとどめていた。


本当はそちらに向かってローライトが【城壁(ウォール)】を使っても良かったのだが、それでは訓練にならないと【(へき)】による妨害を行うよう指示される。

ルビリアは多数迫るリザードキングとアンジェ、ぞして【(へき)】の動きを把握しながら走り、そして躱し、と動きながらも新しく発現した【弱化】をリザードキングに付与していく。


何とか半分を狩り終わる。

あとはその間に、ちまちまとやってきた単体のリザードキングを狩るだけである。ようやく一息が付けた。


そして思い出す。ベリービットが半分を切り倒した後であるが、「安物だ」と言っていたベリービットの剣は砕けてしまったのをアンジェは見てしまった。その前も軽々とリザードキングを屠っていた剣。「本当に安物だったのか」とアンジェは逆に驚くこととなった。


なんだかどっと疲れた気がした。動き回ったアンジェとルビリアは当然として、動かずに【(へき)】を適切な位置に配置することに目を回したローライトもまた座り込んでいた。

次なる魔物がこない内に、アンジェはベリービットに質問をぶつける。


「ベリービットさんは何階層まで進んでるんですか?」

「ああ、俺はソロなら580階層、うちの最強メンバー10名で進んだ最高到達なら700階層だ。700階層のボス部屋がやべえ。まず全エリア攻撃で死にかける。一撃でこれが反応して帰還しちまった」


そう言って腰に固定されている防具を指さすベリービット。


「装備者が瀕死の状態となるとパーティ全員強制帰還するレア物だ。そっから一度も挑んでない。少なくとも対策できるような魔道具を手に入れるまでは入らねえことにしてるよ」


アンジェは遥か高みにいるベリービットでも無理と判断したその敵にごくりと喉が鳴ってしまう。


「あの、700階層まで進んだのは、このダンジョンなんですか?」

「いや、4箇所ともだ!」

「4箇所とも?」

「そうなんだよ!4箇所全てのダンジョンで700階層は全体攻撃がいきなり飛んでくる。このダンジョン作った奴の顔面殴ってやりてー。適当過ぎだろって思ったわ!」


なんとなく自分の身に着けている呪いの装備を見ながら「あー」と口にしてしまったアンジェ。いつか自分も700階層に・・・そう思いながらも今日一日の疲れをとるため、皆が特攻ポーションを手に持ち、乾杯をして飲み干した。


こうして初めての481階層を体験して、その日の修行は終了となった。

それから、490階層台に訓練の場を移したアンジェ達は、さらなる強敵たちに四苦八苦しながらその技術を高めていくのであった。



◆神界


「700階層ねーそういえば時代は範囲攻撃!だった気がするわ!そういえば・・・帝都のダンジョンって最下層何回だったかしら・・・」


見た目だけは幼い少女で可愛げがある小首を傾げる女神ウィローズ。


「あ、そうだそうだ。覚えてるわもちろん当然ね。2000階層までノリで作ってたんだったわ。まあ誰にもたどり着かれてないけどね」


どこかの何かをチラ見して、その最下層を口にした女神。

もはや時間だけは有り余っていたその女神は、妄想の限りを尽くして階層をどんどん下へと広げていったのだ。


「いつかアンジェも最下層で育ち切った竜玉をゲットしたら・・・やっぱりあれよね?記念に思い切って我降臨!ってやらなきゃならないかもね!これは滾るわー!」


そして変態は妄想を暴走させて2台目、3台目のバッテリー作成に精を出すのであった。


お読みいただきありがとうございます。

女神特製のバッテーリーは液漏れや寿命はないという、なんとも羨ましい神仕様です。いつかほしいなウィローズ印のモバイルバッテリー!と思っています。


現在火木日の週3更新となります。

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!

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