/// 68.後始末
今日から20時更新となります。
「はあ・・・なんだか久しぶりにここにきたわね・・・」
ハーフエルフの見た目幼女、エルザはため息をはく。いつか見たその真っ白な空間。
「2000年ぶりかしら!でもお菓子はないのね!」
「だって、お菓子の山を出してたらエルザ全部奪うでしょ。今のエルザだったら少しぐらいなら奪われちゃいそうだし!」
いつの間にか目の前にはいつか見た水色髪の幼女、もとい女神ウィローズが立っていた。
「出たわね!駄女神!」
「何をー!この天才無敵な美の女神に向かってなんて口をー!まあいいわ!2000年ぶり。正確には2023年と6ヵ月の11日ぶりね!」
そういって女神はエルザに棒状の某棒を投げ渡した。
「新作のマリトッゾ味よ!」
「なにそれ・・・なんか甘いだけね。相変わらずこの世のものとも思えないほど美味しいけど・・・」
「まーねー、たまに微妙なのもあるのよ。美味しいけど」
「で、何?」
某棒を食べ終わりペラペラの内側をぺろぺろし終わったエルザはそのペラペラをポイと放ると何用?と尋ねるのだった。
「よっと。まあ、エルザも長い期間お疲れ様!ってことで。アンジェも十分育ったし、ラビもいるし生きていけるでしょ。それ伝えようと思ってね」
女神はエルザの放ったペラペラを以前のようにきっちりと宝箱へと収納すると、エルザのお役目終了を告げる。
「ふー。ようやく私も本当の意味で自由になるのね!肩の荷が降りるわ!」
「なによ!自由気ままに生きてきたじゃない!」
「そんなことないわ!ここ最近は特に!あの新しいダンジョンの時とかホントどんだけ我慢したか!こっそりダンマス殺ってきたらばれないかな?って思ったんだから!」
「あーね。あれはまあイレギュラーだったし・・・私のせいじゃないし!」
ふーふーと吹けない口笛を披露しながらとぼける女神をエルザはジトーっとした目で見ていた。
「で、何?お役御免になった私はそろそろ死ぬの?」
「なんで!私がエルザ死なすわけないじゃん!アンジェの次に推してるのよ!」
「えっやめて?なに?相変わらず変態維持してんの?」
「変態じゃないわ!博愛よ!」
エルザはジト目は止めない。
「ということで。エルザは自由に生きていいわ。現状を続けるもよし、破壊衝動に駆られるも良し!世界の覇者になるもよし!」
「アンジェと敵対する遊びに興じても良いと?」
「だめよ!なんでそんなひどい!って本気じゃないならいいけど・・・エルザは相変わらず・・・じゃないわね。前はもっと素直だったわ」
「おかげさまで。悠久の時を生きてきましたからねーいい加減死んでもいいと思てってるわ」
「まあそう言うなってー。これあげる」
そういうとふよふよと箱のような薄っぺらいものがエルザの手元に飛んできた。
「何?このおっさんの箱?」
「それは特に意味ないわ!開けるよの、パカーって上からパカーって」
そしてエルザはそのよく分からない箱をパカーと開ける。中にはまたおっさんの描かれている透明のペラペラに包まれたお菓子。いつものようにそのペラを裂いて口にれる・・・その衝撃に腰から砕け落ちる。だがその箱はしっかりと中身を落とさぬよう配慮した。
「こ・・・これやばいわね・・・甘さとサクフワ感が絶妙!某棒は3日だけどこれは1週間ぐらい何食べても味気ないと感じちゃうわ・・・危険ね!」
「でしょ!某棒もいいけどこれは一箱でだけど30倍ぐらいはするやつかしら。『安藤さん』っていうらしいわ。不思議ね。アンジェの名前と一緒!」
「で・・・こんな危険なものを押し付けて、今度は何をさせようっていうの?」
「何もないわ。今までのねぎらいと、今後も私にエルザの生きざまを見せてほしいだけ。10年ごとに新作送るわ。まだまだいっぱいあるのよ。アンジェの元居た世界では」
「それは・・・楽しみね!乗ったわ!じゃあもういいわね!これを一人でゆっくりねっぷり楽しみたいし!」
そう言うと、また口の中から涎が垂れそうになり腕で拭う。思わずその場で残りの5本を平らげそうな衝動に駆られてしまう。
「あと一つお願いがあるのよ!これみて!」
「な、なによ!結局お願い?・・・って何その箱?」
エルザの目には何やらゴテゴテとして装飾が施されている2メートルぐらいの高さのある箱のような物体を見ていた。正面の真ん中には何やら20個ほどの四角い石?のようのものがはめられていた、その一番したの石が赤く光っていた。
「たたたたったらりらー♪『アンジェ専用☆神力バッテリー』!これにね。ちょっと魔力流してほしいんだけど・・・ここにね手を置いてぎゅーってね、ぎゅーって!」
「なんなのよそれ!意味がわからないわ!」
「あんたここに呼んだり、アンジェにプレゼントする時は神力をね、使うのよ。でもあまり神力同じとこに使うと、こないだのダンジョンできちゃったーみたいになるのね」
「ちょっと今あんた何いった?やっぱりあんたのせいだったじゃ」
「しゃーらーっぷ!もうその話は終わったのよ!いろいろね!」
自分の顔の前に人差し指を立て「ちっちっち!」と言いながらエルザの当然の文句を巧みにかわす女神。
「本当は秘密なんだけどエルザだから教えてあげる。神力はね。気力で補えるのよ!あの時も枯渇した神力を気力でなんとか絞り切って対処したの。だからあの程度の大きさでとどめることができたのよ!むしろ私は世界を救ったのよ!」
「なんだか釈然としないわね」
女神はやれやれ、と両掌を上げ変な顔をしていた。エルザはかなりの殺意が沸いた。
「ちょっと!話がこじれるからそんな怖い顔しないで!」
「お前がいうな!」
「まあまあ。でその気力を神力に変えるのを溜めておけるのがこのバッテリーなの。で、あんた呼ぶためにこの石のやつ、これね。2つばかり消費したのよ」
「気力で補えと?」
「バカねエルザは!ってちょっと殺意駄々洩れ!やめてよ、返り討ちにするだけだんだから!優しくね。まあそろそろ本格的に時間がやばめなので早く進めるね。やっぱりエルザ恐ろしい子。時間がいくらあってもペロペロできないわ!」
「いいから進めなさい!」
もう怒りを通り越していたエルザは肩をフーフー震わせて早く帰りたいと思っていた。
「エルフとは言え、その気力だけでは一個もたまらないわ。私でさえ寝る前に残った気力を注入しても3つが限界なのよ!でね、あんたには特殊な肉体強化付与してるし長い時間かけて熟成されてるから・・・あんたの魔力なら全力で3つ行けるかもって!そして呼び出した分を補ってもらおう!と思って」
「わかった。もういいわ・・・早くやって帰る。私も結構忙しいのよ」
そういってそのバッテリーに手を付け、魔力を籠め・・・籠めた瞬間、体中の魔力の全てが吸い込まれるような感覚に思わず手を離そうとしたのだが・・・結局その体内のほぼ全てが吸い取られ、よれよれになってからエルザの手は離れ、そしてエルザは前のめりに倒れてしまった。
「3つか。まあ頑張った方だわね!ありがとうエルザ。これでもうちょっとしたらまたアンジェにプレできるわ!これはお礼よ!じゃあね」
「こ、この!クソ神・・・いつか殺す・・・」
「いい目ね。新しい壁に目覚めそうよ!」
「くっ」
女神の気持ち悪い一言とだらしない顔を見ながら、その白い空間から追い出され、見慣れたイースト地区のギルドのデスクに顔をつっぷして目覚めるエルザだった。
目の前には、先ほど開けた残り5本の『安藤さん』と、もう一つ新しい『安藤さん』が積まれていたので、ストレス解消と栄養補給に5本の残った方を全て胃の中に流し込んだエルザだった。
「アイツ!いつかほんとに殺す!」
エルザの殺意衝動は止まらない。
いつもの場所へと戻ってきた?エルザだが、魔力はすっからかんになって1時間ほど動けずにいた。
普段は暇そうにしていても実は忙しいエルザ。先日の神国の件も独自の秘匿通信網で各所に連絡してすでに解決済みである。
当然のことながら神国教王、ダイヤマウンド・ゴッデサルクについては失脚。弟のタンザライト・ゴッデサルクを教王にすげ替えみっちり24時間の詰め込み教育を施した。もちろん他国に迷惑をかけないようにである。
その洗脳、もとい教育の甲斐もあり、エルザが帰る時にはしっかりとした最敬礼で「何かあればご命令くださいエルザ様」と元気よく見送ってくれたことから、今後も他国に迷惑をかけるようなことはしないであろうと思われる。
英雄連合についてはギルド経由でベリービットを呼び出して、直接本部と連絡が取れるよう秘匿通信の魔道具を押し付けられ、これでエルザの手足となって働くことができるであろう。
エルザは今後のどうしようかと思案する・・・が、このポストに就き続けてもう1000年以上。今更他のことをする気はない。このままのんびりと冒険者たちの母?いや姉として見守ることこそ幸せなのだ。そう心に決め、明日からどうやって三食昼寝を貪ろうか考えていた。
◆聖都ルリアーヒル・中央都市・王城
「はー。神国がやらかして大変なことになったって話しきたけど・・・エルザちゃんに迷惑かけるとか・・・アレキ兄ちゃんその辺教えてなかったのかな?」
「アレキ兄ちゃんってあの天使族の人?」
「そうそう。確か今の教王ってその孫ちゃんだったはずだけど・・・」
「忘れたんじゃない?しょせん爺ちゃんの戯言って・・・」
「天使族なら・・・あり得るか・・・」
聖都の女王『クロサイス・ラピズ・ルリアーヒル』とその妹の『クロサイス・ラピズ・パルーズ』であった。
エルザの強さよーく知っている。ハーフとしてラモアの集落から追い出されたものの、そこからこの大陸を牛耳った手腕は覚えている。自分も狩りが大嫌いでラピズの集落を追い出され、そこでエルザと出会った。
マーモンをぶんなぐりにいった時を今でも覚えている。
その後は大陸を救った英雄パーティとして祭り上げられ、今ではクロサイスという苗字ももらって、クロサイス・ラピズ・ルリアーヒルとなった。正直女王と言われてもこの国は何もすることがない。
商業都市として流通を牛耳っていたり、魔術に長けたものが通う魔道学園があったりするが、それらはエルフの幹部会が全部うまいことやってくれる。私は言わば軽い神輿だ。だから妹のパルーズとのんびり暮らしている。
しいて今、やることと言えば幹部会にエルザちゃんに手を出したら国が飛ぶから気を付けて。という注意を促す程度であった。
「はー。エルザちゃんとこに遊びに行きたいな・・・」
「いいね!私も行くー!」
まずは頭の固い幹部会の説得からだ。国の象徴として祭り上げられている私はほぼ外に出れない。のほほんとした性格を知られては困るからだ。まあなんとかなるかな。そう思って重い腰を上げ、幹部の待つ会議室へと歩き出したのだ。
◆マモンサークル魔境・魔人王城
「はー緊張した!やっぱりエルザ姉ちゃんとしゃべると汗が止まらない!」
魔境の王、魔人王であるマーモンは、吸水性が高いふんわりタオルで顔から噴き出た汗をぬぐっていた。
「一言目が『あんたは私に迷惑かけないわよね!』とか言われてびっくりして鼻水でちゃったよ。そんな自殺行為するわけないのに、妻も子供もいて幸せに暮らしているっていうのに。少しは信用してほし・・・まあそれはしょうがないか・・・」
ここマモンサークル魔境は、魔人族のための国であり、そこの王、マーモンは過去の自分のやらかしで討伐されたことになってるが、現役バリバリでこの国を統治していた。他国没交渉とは言っているが、実際は一部の集落とは交流があり、高純度の魔石と交換で様々な食料や生活用品を交換している。
「そうだ!この前、部下が持ってきたどっかの名物だっていう『東の都どら焼き』でも持って遊びに行っちゃおうかな!だめかな?今度親父に聞いてみよっか・・・会いたいなーエルザ姉ちゃん・・・」
◆神界
「はあー。なんだか私もちょっと肩の荷が降りた気がしたわ。これで後はアンジェちゃんの無双を見ることに専念できそうね!」
ふふふーんと鼻歌を歌いながらご機嫌なのは、ご存じ変態駄女神ウィローズであった。
エルザを呼び出したことで1つ分余分にチャージできたバッテリーを眺め、こんな感じならエルザの魔力が全開になったらまた呼んでもいいかも!なんて迷惑なことを考えていた。
しかし、次回呼び出した時には・・・その話はまた今度・・・
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現在火木日の週3更新となります。
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