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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・帝都の英雄編
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67/74

/// 67.外伝・エルザ・始まりの時

むか~し昔のお話です。

「何?ここ・・・」


私は今、真っ白な空間に立っていた。

身に着けているのは雑多な布切れを肩からかぶって縛ったたけのいつもの服装であった。靴?ないよ。常に裸足。たまに木の弦をほぐして編んだ靴っぽいものを履いているけどすぐに擦り切れてなくなっちゃうし。

毎日お腹を空かせてやんなっちゃうよね。でも頑張らないと。お姉ちゃんだしね。


でもここ、何だろう?私寝てたっけ?ああ、ちょっと寝てたかも。お腹が減って力も出ないしね。じゃあこれは夢か・・・おかしな夢。何にもないもんね。夢なら豪華なお菓子とか・・・夢とは言え、お菓子はちょっと贅沢か。

そう思っていたら、目の前にきらきら光る棒状の何かの山ができていた。お菓子でいいんだよね?分からないけど。食べていいのかな?いいよね。私の夢だし。

そうしてそのお菓子の山に手を伸ばす。

多分私史上最高の笑顔になってる自信がある!


「お菓子は食べていいけど夢ではないわ!」

「わあ!ごめんなさい!」


突然聞こえた声にびっくりしてしゃがみこむ。頭を押さえて殴られてもいいようにじっと待つ。


「何それ!可愛いんだけどーーー!ふんは!ふんは!」

「ぎゃーー!変態ーーー!」


そして私は仰向けに倒れ込み意識を手放した。



「まったく・・・なんて無防備な・・・これはこれは・・・いいわね!ちょっとぐらいなら・・・味見してもいいかな?いいよね!」


意識を取り戻して早々、なんだか身の危険を感じてしまう声が聞こえてきたので勇気を出して目を開ける。目の前には、水色の綺麗な髪をした同じ年ぐらいの少女?が私をのぞき込んでいた。心臓が止まるかと思った。

だって、私をのぞき込む顔は、どっかの貴族のキモ豚禿親父の私を見る目と一緒だったから。これはダメな奴だ。このまま何もかも奪われてしまう。これは死んだ!エルフとしての尊厳も何もかももきっと死ぬんだ!

いや待って?私の夢か。願望じゃないよね?私隠れM?・・・そんな訳はない!


「いたっ!」

「いたたたた・・・」


私が勢いよく体を起こすと、お互いの頭がごつんと当たって目の前に星がいっぱい見えた。くらくらする。


「もお!痛いわね!まあいいわ!ちょっと新たな(へき)に目覚めそうだけど今はあまり時間がないし・・・」

「時間?どういうこと?」


痛むおでこをさすりながら、私はその少女に聞き返した。


「まずは・・・」


そう呟いたその少女は全身に光りだすとすぐに収まった。そして私も光っていて・・・おでこの痛みも消えていた。ついでに体中にあった擦り傷や手荒れなんか綺麗になって、つるつるしたお肌へと変身していた。


「はあ、はあ、玉のようなお肌・・・これは!行くっきゃない!」

「いやーーー!」


目の前の少女はまたも某貴族禿のような顔でこちらに迫ってきたので思いっきり叫んでその恐怖から逃れようと走り出したのだが、その体は宙に浮いて足は空回り。そのままクリルと体は周り、少女の方へと向かされた。


「私としたことが取り乱したわ!時間がなかったのよね!エルザ、あんたが可愛いのがいけないのよ!それはもう大罪だわ!女神たる私をこうも惑わせるなんて!くっ恐ろしい子!」

「何を言っているのか分かりません!」


私の言葉にやれやれといった表情で両手の平を上に向けたその女神と名乗る少女。


「私は、何を隠そう、あの有名なっ!女神っ、ウィローーーーズ!なのよ!!!」


その少女は、名乗りと共に背後には大きな爆炎がほとばしりよく分からないポーズをとっていた。鳥?


「女神様・・・ですか?では何様で私をここへ?」

「まあこれでも食べなさい!」


そういうと女神は先ほどの山からスティック状の物を投げてよこした。


「お菓子!」


思わず叫んでしまうがこのペラペラつるつるした表面はあまり美味しそうには見えなかった。そのままかぶりつくが、か、噛み切れない・・・


「あ、ちょっと!貸しなさい!」


無理やり取り上げられてしまってしゅんとする。いいもん。味もしなかったしなんか美味しくなさそう。


「ほへほ、こうひへ・・・ほうよ!」


別のやつを取り出して上から器用にあのペラペラを裂くと中から黄色い何かが出てきた。もう匂いがやばい!その嗅いだことのないにおいにつられてフラフラと吸い寄せられるように女神の持つそれにぱくりとかぶり付いた。

サクサクとした食感で・・・どうしよう!言い表せない!この世の物とも思えない最強な味わい!きっとどこかの誰かが何十年も修行を重ねて作ったまさに至高のお菓子!


そんなことを考えながら、女神様?から少し強引にそれを奪いさると、さくさくと食べ進めすぐに全てをのみ込んでしまった。今の私はきっとだらしなく口元を緩めて恍惚の表情をしているに違いない。

これは!お礼をしっかり言わなくては!そしてあば良くば・・・もっとお菓子を・・・

っと思って女神様を見てみると、先ほどお菓子を持っていた手はそのままに、顔は・・・顔は・・・もうダメだ。絶対ダメな奴だ。


女神は先ほど私から取り上げたお菓子を、あのペラペラの外側を剥かないまま口に咥えていた。さっきまで私の口に入っていたから涎とかで汚れてたのに・・・きたないなー。そしてその口元からは涎が垂れ、鼻からは血が・・・どうしよう・・・怖い・・・

これはちょっと逃げた方がいいのでは?と思ったらまた宙に浮かんで戻された。


「ごめんごめん。あまりのことに我を忘れてたわ!エルザ!あんたはすごいよ!うんうん!」

「ひっ!」


女神様は口からそれを引き抜くと、ペラペラを裂いて中身を口に放り込んだ。残されたそのペラペラは宙に浮かんで・・・丁寧に折りたたまれ・・・なにやら透明な何か、袋?のようなものに入れられると、ふらふらと奥に出現した豪華な宝箱のようなものに入っていった。

なんて夢だ・・・


「まあ夢であって夢じゃないんだけどね。もう本当に神力限界マジやばめ!だから簡潔に言うね!もう私をこれ以上誘惑しないでね!」

「ぐっ」


なんだか色々言いたいことが浮かんだ私だが、ここは堪えて話を聞くことに専念した。


「まずここは神の世界の私の部屋。そして私は女神。あなたの夢と、私の部屋をつないでいるのが今の状態。分かる?」


あまり良く分からないけど分かったふりしてコクリと頷く。


「まああまり分からないならいいけどね。あなたは自由に生きなさい!あなたには丈夫な体をあげるわ!えいっ!くっ、ちょっと時間やばいわね!本題進めるわ!聞くだけきいて!まじ時間ないペロペロする時間ほしい!」

「ひっ」


「怖がらなくてもいいのよ!私はあなたの味方よエルザ!これから自由に生きた世界の先には、きっと・・・そうね、2000年ほど先の未来かしら!私と同じように水色の綺麗な髪を持った、私と同じように魅力的な美少女と出会うわ!」

「・・・」


「何が不満なのかしらね・・・まったく。まあその子に会えばすぐにわかるわ。直感でそう思う。運命の子よ。エルザはその子をそれとなく見守って。でも直接助けちゃだめよ。影ながら支える系。でもほんとにその子が泣いちゃって困った時には少しだけ手助けしてあげてね。それ以外はぐっとこらえてほしいわ。その子、めっちゃ守りたくなる天使ちゃんだからね。構いたくなるのも当然だし」


恍惚の表情を浮かべ、涎が再度垂れだした女神に恐怖を感じつつ頷く私。


「お礼に、10年に1本のペースでこれを上げるわ。エルザの目の届く範囲に転送するから」

「10年に1本ってケチくさくないですか?」


恐る恐るいってみたのだが・・・


「あんたこれにどんだけの価値があるか分かってないわね!これは地球って星のロングセラー商品『おいしい某棒』ってやつなのよ。さっきあげたのは野菜味。他にも焼肉味やチーズ味、エリクサー味なんてのもあるわ!神力を使って召喚するのよ。貴重なのよ?分かる?」

「わ、分かりました。じゃあ、それ以外は自由に生きていいいんですね」

「そうよ!」

「でも・・・2000年先って・・・私ハーフエルフだから1000年ぐらいしか生きられないと思いますよ?」

「大丈夫さっき丈夫な体を付与したから。多分死なないわ!」

「えっ」

「だから自由に何でもやりなさい!あなたの好きな世界に変えていいわ!あなたは私の代行者!おっともう時間・・・おまけよ・・・じゃあね」



目の前が真っ白に包まれ、私は目を開ける。

見慣れたボロ小屋。夢から覚めた。


でも・・・夢じゃない。手には先ほどとは色や模様が違ったあの棒を握っていたから。


そして私は周りを素早く見渡すと、周りの子たちがまだ眠っていることを確認してその小屋をそっと抜け出し裏に回ってそのペラペラを裂いて中身を全て口の中に放り込んだ。うん!やっぱり美味しい!なんだか昔ちょっとだけ舐めることのできたミルクのような、でも全然違う濃い味がした。

だめだ・・・もうこんなの食べたら何も食べれなくなる・・・美味しすぎて困ってしまう。でも次は10年後・・・待ち遠しいな。


「エルザちゃん。どうしたの?こんな朝早くに」

「ん、ああエル。ちょっとね・・・」


この男の子はエルリエキ。戦争孤児の人族。一緒にこのボロ小屋を根城にして暮らしている。


「なんだか・・・美味しそうなにおいがする・・・」

「な、なにかしらね・・・知らないわ!」


思わずごまかそうとあの女神のようなしゃべり方になってしまった。


「ずるいよエルザちゃん!」

「あっちょっと!」


エルリエキは私に近づきぺろりと唇を舐めてきた。

そしてゴチンという音と共にうずくまるエルリエキ。乙女の唇をなんだと思ってるんだ!げんこつを落とされても仕方がないと思った私は、多分顔が真っ赤になっているだろう。初めてのことだったから・・・


「いたいよーエルザちゃん・・・」

「あんたが変なことするからでしょ!まったく・・・そういうのはザードとやんなさい!」

「エルザードとはこんなことしないよ!でもごめんなさい。美味しかったです」

「くっ!」


素直に謝られてもこっちが恥ずかしくなってくる。確かにあの匂いは食べた後でもプンプン匂っていたハズ。お腹を空かせたこの子たちに我慢できるはずがない。仕方がないか・・・

でも、こんなとこザードに見られたら誤解されちゃう。あの子はエルの事大好きだから。

ザードとは、エルリエキと同じ人族のエルザードという女の子。私とも当然のように仲良しだが、エルリエキのことになるとちょっと怖い。私はエルのことを何とも思ってないのだから。

名前も三人にていた。だから私はエルザ、エルリエキはエル、エルザードはザードと呼んでいた。この家には、他に元は天使族の貴族だったという弱虫な男の子、アレキ、本名アレキサンドラ・ゴッデサルク。

私とは別の里出身だけどエルフの女の子、ルリ、本名ルリアーヒル。あとは獣人族のガキ大将、ラミア、本名ラミアドルフと、最後に甘えん坊のマーモン。これは本名そのまま。自称だけど魔人王という魔人族の王家の末っ子らしい。あんなに甘えん坊なのに・・・


そんな7人で共同生活。とは言ってもどっかで野菜を盗んできたり、ごみをあさって食べ物を拾ったり、街のごみを拾って売ったりお小遣いをもらったりなどなど。その日暮らしを続けていた。

私も、無気力無能力でエルフの里を放り出されたハーフの厄介者。ここに住み着くまでは下品な貴族に奴隷にされそうになってなんとか逃げてきた。

そんな無力な私だが、小屋に帰ってから人生が変わったことに気が付いた。


◇◆◇ ステータス ◇◆◇

エルザ・ラモア 7才

レベル1 / 力 F / 体 S / 速 F / 知 F / 魔 S / 運 S

ジョブ 超越者

パッシブスキル【肉体強化】【身体強化】【成長強化】

アクティブスキル【神足】【次元収納】【詳細鑑定】

加護 女神ウィローズの加護


開いたステータスの空白だったジョブに超越者という文字。そしてオールFだった能力もSが3つ。

なによりスキルなしだったこの私が・・・多数のスキルが並んでいる光景に息をするのを忘れそうだ。

しかし【成長強化】は嬉しい。でも【肉体強化】と【身体強化】ってなに?同じじゃん!って思ったけれど、よく見てみたら【肉体強化】は体が強くなる、そして【身体強化】は能力値が上がる。といったもの。微妙に違うのね。

じゃあ女神が言ってた健康な体っていうのが【肉体強化】の方か。それにアクティブの方もすごい。【神足】は分からないけどレアスキルが2つ!鑑定と収納はこれ一つだけで国からも重宝されるスキルであろう。


でも考えると女神は自由に生きて良いといっていた。お城に仕えるなんて窮屈そうだ。良い暮らしはできるかもだけどきっとこのスキルがあればこの子たちにも沢山のものをあげられる。よし!私は自由に生きてこの子らを守る!今日から私はみんなのお母さんだ!


そう決意を決めたエルザは、手本の女神の傍若無人さを取り入れて、一歩ずつ覇王の道を歩みだしていく。


お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

今回の外伝はさわりだけとなっています。このお話の先にアンジェの物語があるのですが、その間のお話についてはまた機会があればぜひ・・・次の話でもちょっとだけ。でも本編に戻っての流れとなります。


ということで、現在火木日の週3更新となります。

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!

そんな方は下の☆☆☆☆☆を押して頂けると嬉しいです!

もちろんブクマやコメント、レビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。


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