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ルネサンスの女神様 - ねえ、電気つけてよ!  作者: 亜之丸
動き始めた社会 [10日後]
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6-4 地図

 大山幹人が通う高校の地理部部室では、幹人と地理部の部員たち、それと初めてそこを訪問した佐藤隆二、野地博実により話し合いが行われていた。


「それにしてもインターネットの地図が使えなくなったのが痛いですね。

 古い地図であれば、この部室にも地理院が発行した大きな地図や厚い全国地図帳などもありますが、それでは現在の町の中までは判りません」


「だったら、地図はこれを使ってくれ。

 これはマリエさんから預かってきた摩導具だ」


 そう言うと、隆二は薄い封筒から何枚かのA4サイズの紙を出した。

 隆二が封筒から取り出したものは一瞬紙かと思ったが、それは薄いフィルムシートであり、それは地図が印刷されたものであった。


「へえ。 地図ですか。

 プラスチックみたいなので、外を歩く時、雨に濡れても使えそうですね。

 ただ、今回のターゲットとなる場所の地図が含まれていれば嬉しいのですが」


「いや、これは摩導具なのでそんな心配はないよ。

 タブレットの地図と同じように使うことが出来るから」


 そう言うと隆二は、その薄いシートの地図に対して指で操作すると、印刷だと思われたその地図は、指に合わせて場所がスクロールしたり、表示が拡大縮小したりと操作することが出来た。


 これは、カノ国で使われている摩導シートの機能限定版であり、バングルやリング無しで誰でも使えるように、機能を一部に制限してある物であった。

 隆二がその地図シートの横に、別のシートを重ねて置くと、2つの地図の表示がつながり、それは大きな地図になった。

 更に何枚ものシートを置いて広げていくと、なんと机一杯の1枚の大きな地図シートになった。


「すごいですね。 これって印刷じゃないんですね。 これが摩導具というものですか。

 紙の地図やタブレット端末より見やすいですよ!

 これ、最初の大きさだと、皆で町を廻る時に持ち歩けるので便利そうですね」


「あとさ、ここを操作すると、ほらツールが表示できるだろ。

 そのツールを使えばマーカーペンの表示が出てきて、地図に書き込んだ情報は、他のシートとも共有できるみたいなんだ」


「え? これって通信機能が有るのですか?

 離れた場所同士でも、それって使えるのですか?」


「各シートに同じ内容が表示されるってことは、多分そうじゃないかな?

 俺も詳しくは知らないので、実際に使ってみるしかないな」


「あの?

 と言う事は、このシートの機能を使えば、私達は離れた場所からでも、お互いに連絡を取り合う事が出来るのじゃないですか?」


「お‼ そうだね。 ちょっと試してみよう」


「ツールの中に付箋機能もあるみたいだから、それに書き込んで決まった位置に張り付ければ、連絡メモのように互いの連絡がわかりやすそうですよ」


「隆二さん、僕にそれ1枚貸してくれませんか?

 ちょっと自転車で走って、ここから離れてみますから」


 そう言うや、幹人は1枚のシートを受け取って、外に走って行ってしまった。


『これ見えますか?』

『見えていますよ』



『まだ見えていますか?』

『ぜんぜんOK』



「スマホが使えない今、これは連絡方法としても強力ですね。

 あとは、どこまで通信ができるのか分かりませんが……」


「これはカノ国の技術で動いているので、多分だが、これは場所を問わずにどこでも使えると思うぞ」


「え? 私の家からでも使えるってことですか?」


「いや、地球上であれば問題なく使えるのじゃないかな?」


「何ですか、それって冗談ですよね」


 こんなものがあることが日比谷会議にばれたら、相互連絡分会に取り上げられそうであるが。



「それより、他に機能がないかすこし調べてみませんか?

 シートを皆にも配るから、使ってみましょうよ」


「へー、これクルクルって丸めても壊れないんですね。

 部長、持ち歩きする時にも軽くて便利そうですよ」


「あれっ⁉ これ上空からの写真も見れるのね。 拡大すると、地上に人の姿まで見えるわ。

 ん? 人が動いている? すごい、これって動画で見れるんだ。

 この周辺を見てみるね!」


 一度ズームを遠ざけて、この周辺を表示しながらズームで拡大していくと、上空から見た学校の校庭が映し出されていた。


「すごいね。 確かにここの上空だわ。 こんな映像って、いつ写したんだろう。

 うん? この校庭を自転車で走っている人って、ひょっとしてこれ幹人君じゃない?」


「まさか? いくら何でも生の映像ってことは無いでしょう」


『幹人君、上を向いて手を振ってみて』

『了解』


「やっぱり幹人だわ、これ」


「そ、そうね。 確かに上を向いてもらうと、何となくだけど、顔まで判るわね」



 しばらくして、幹人が教室に戻ってくると、


「え? どうしたの? 言われたから手を振ったけど何かあったの?」


「これ見てよ」


 表示しているシートは記録もできるようなので、先ほどの画面を再生すると、校庭で手を振る幹人が写った映像を見る事ができた。


「この摩導具って、いったいどうなっているの?」


 このシートこそがカノ島を構成している摩導シートそのものであった。

 カノ島の大地を始め、摩導カートや住居などもがこの摩導シートで作られている。

 そのシートの表面には、自由にテクスチャや情報表示を行うことが出来る。

 カノ国以外の人が使うときには、あくまでその一部の機能しか使えないのではあるが。


 それと、カノ国が打ち上げ、宇宙から地球を観測している摩導ボールの映像データは、摩導サーバーにすべて保存されているので、地上を映した映像はすべて見ることが出来る。

 タイムシフトにより時間を指定することで、過去の地球のどの場所の映像であってもプレイバックが行えるが、残念ながらこのシートは機能制限されており、リアルタイムの映像と自分の録画しか見ることが出来なかった。

 しかし、宇宙空間から地球全体を撮影していて、人の判別ができるレベルまで拡大できるとは、摩導ボールのカメラはいったいどれくらいの解像度が有るのだろう? また、それを過去から保存しているサーバーの容量って?


 カノ島では、過去の犯罪追跡などで、宇宙からのこの映像を使って、地球上の人や軍事基地の動きのトレースが行われた事もある。

 摩導ボールでは、可視光線による映像だけでなく、サーバーにはさらに多くの情報が送られ、それはすべて収集されている。

 このシートには制限がかかっていたが、これで利用できる情報だけでも十分脅威である。


 この地図を使う事で、具体的な場所を示すことが出来、さらに現在の町の状況を大きなシートでリアルタイム画像として見る事ができ、皆でその地図に情報を書き込んでいく事で、どこをターゲットにするかも決まって行った。



 そろそろお昼となったので、皆家から持ってきたお弁当を出し始めた。

 外で食事することが出来ないため、両親が集めてくれた貴重な食料を持ってきているのだ。


 隆二は、持ってきた大きな鞄から小さな箱を取り出した。

 しかし、一人暮らしなのか、野地さんは今日の食事の準備が出来なかったようだ。


「これ、今朝買ってきたカノ国の食料だけど、もしよければこれを食べてくれ」


「わっ! 本当にいいのですか? 私、あまり食料を持っていないので、とっても嬉しいです。

 えっ!! 何これ! 蓋を開けたら、中から湯気が出ていますけど、箱の中は熱いのですね。

 うーん、おいしい。 なにこれ、凄いですね」


 そう野地さんが言うと、湯気と一緒に香りが周りに漂った事もあり、その周りに人がたかってきた。


「まだあるから、食べたい人はこれを食べてもらってもいいよ。

 それと、これは東京ブランチで試験的に栽培しているサツマイモだ。

 今回栽培する芋のサンプルとして持ってきたけれど、蒸したり焼いたりすれば美味しく食べられるから、この検討会が終わったらあげるので、みんな家に持って帰ってくれ」


「ありがとうございます。

 さっきのお菓子と言い、あまりにも嬉しいおみやげです!」


「まあ、これを買ったお金はマリエさんから頂いているので、彼女に感謝だな」


「そうなんですか…… 隆二さんは彼女にいろいろとサポートを頂いているのですね」


 幹人はそう言うと、ちょっとうらやましそうに、年上である隆二を見るのであった。




「では、そろそろ本日のまとめをします。


 今回計画するすべての作業賃金や仕入れ代金として、このチケットが渡されます。

 このチケットは、今度開く特別なコンビニで使用する事ができます。

 そのコンビニでは食料品や飲料、日用品が買えますが、この店舗は一般の人には公開しません。

 カノ国で印刷してもらうこのチケットを持つ人だけが入店でき、この特別なコンビニで利用できる唯一の専用通貨になると言う事です。


 そのコンビニで販売する物については、既に食品工場で造られていて、メーカーや問屋の倉庫に包装パックされて保存可能な状態で残っている、食料品やお菓子、ペットボトル、缶入り飲料、調味料などです。

 それと、日用品や下着などの衣服、それ以外にもコンビニで取り扱っていた基本的に日持ちする商品ですね。 これらは問屋さんの在庫を使います。


 それと、停止しているデリカ工場に米や野菜、水などを運び込み、摩導具を使った加熱などで調理を行い、おにぎりや弁当を新たに製造してもらいます。

 その為に、各工場や倉庫やメーカーに残っている食材料や弁当箱などの資材の運搬が必要です。

 材料や調理方法から種類は限られますが、弁当は家庭で作れるような品目が中心となるでしょうね。

 それと、配送にトラックは使えませんから、商品をコンビニにまで運搬する自転車の人が必要ですね。

 これらコンビニに纏わる一連の仕入れや作業にかかわる費用も、すべてこのチケットにて支払われます。


 コンビニには、カノ国で作ってもらうレジを置き、バーコードスキャナはチケットの真偽判定と、次の納品の為に販売した商品の記録を行います。


 僕らは、農地を作成する予定地を決定し、実際にそこに行き、そこに住人がまだ住んでいるのかの存在確認と、住民がそこで自分たちで畑を育てる意思が有るかを確認をします。

 もしそこに畑を作る事の合意が有れば、最初にその地区にコンビニを開店させ、道路を開墾する土木作業を行う人が受け取るチケットを使えるようにする。


 コンビニが出来れば、後は農地転用可能な土地や道路の開墾作業を開始します。 この作業は、主に道路からアスファルトの除去と、土を耕した後に救荒植物の苗や種の植え付けですね。

 植物を育てる以降の事とその収穫はそこの住民に引き継ぎ、土地の引き渡し以降は、その土地や植物に関して我々は関与しない。

 土地の管理が出来なかったり、植物を育てることが出来なかった場所は、それはそこに住む住民の責任であり、その後の収穫物は得られない。

 土木作業が終わった地区からは、新たな土地へとコンビニは移転します。


 まあ、今日決まったことは以上かな」



「俺の作業分担だが、利用するコンビニ店舗の交渉と、以前勤めていた時の食品工場や倉庫などを廻って今回の協力を取り付ける。

 なので、コンビニの運用については俺の方で担当する。

 野地さんは地理部の資料を元に、開墾する場所を決定し、その地区の住民とコンタクトする。

 幹人君は、その作業全体の指示と運用管理で良いかな?」


「そうですね。

 いずれにしても、当面はこの僅かな人に限られますので、大きなことは出来ませんが、一度動き出せばそこに関係する人の数は一気に増えますので、あとは楽になってくれるといいのですが……

 いよいよ、大変そうですね。 これで、僕も日比谷会議からは卒業ですか」


「そちらの作業から、君がいきなり抜けてしまっても大丈夫なのか?」


「日比谷会議には、優秀な大学生が何人もいますので、多分何とかなるでしょう」


「あと俺は、今回の計画に必要になりそうな物があるので、マリエさんに頼んで富山に行くつもりだ」


「分かりました。 とりあえず隆二さんは自由に動き、そしてコンビニ開業の準備をお願いします。

 本日から作業を開始しますので、すべての指示はこの部室を中心に行います。

 そして、何かあれば先ほどの摩導具によって連絡を取りたいと思います。

 では、皆さんよろしくお願いします」


 こうして、都市部の農地化計画が始まった。

先日お伝えしたように、2021年12月分から投稿タイミングをすこし変更します。

投稿は、火,木,土の朝8時ころに行いますので、次回投稿は12月7日となります。


亜之丸

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