8 侍女を観察しているだけですが
最近体調不良でほんと無理。風邪大っ嫌い!!
「…っ!」
エバは私の部屋でナイフを両手で持ち、無理に覚悟を決めて私の椅子をドスドスと刺していた。その光景を扉越しで目撃してしまう。
…なんだろう、この状況。もしかして、エバは私への嫌がらせを命じられてる感じ?いや、まだ断言できないけど。
「よいのですか?あのままにさせて。」
「ひとまず、構わないわ。代えのものの注文をお願いしてもいい…?」
「かしこまりました。」
エバは椅子に向かってザクザクと刺し終えると、侍女の仕事の時間なのか、ドアから出ていった。私とロンは曲がり角で隠れる。
「何をなさっておられるのです?」
「観察。」
…夕食ぐらいまで彼女を様子見しようかな。
***
そこからは、エバが私にバレないように周りを見ながらせっせと私に嫌がらせを行っていた。
彼女は私に冷めた誰のかわからない髪の毛入りのスープを持ってきたり、渋くて苦すぎるお茶を出してきたり、なにせ私の引き出しの中身を部屋に散乱させるわ、ドレスを窃盗するといった嫌がらせ。
まだ今日、侍女になったばかりだというのにここまでの嫌がらせができることが逆にすごいと感じてしまうくらい。
嫌がらせが好きな子には見えないけれど…やっぱりリーゼ命令としか考えられない。だけど、やっぱり確証はないし…。
「お嬢様。よろしければ、髪を結びいたしましょうか?」
エバは親切心にそう言ってきた。私は微笑みを返しながら、口を開く。
「えぇ。お願いいたしますわ。」
化粧台の鏡を見ながらも、人差し指を机にトントンとやりながら、考え事をしていた。ちなみにこれは私が考え事をするときの癖である。
どちらにせよ、エバはなんで嫌がらせをするのかが疑問よね。しかも、どれもエバだって分かるような感じだし…。私に罰せられることが目的?いやいやいや。
何もこの宮殿には私を含めても少人数。疑われるのは、ロンとエバぐらい。となると、必然的にエバが容疑者ってなるのに…。
「3日後の夜会での髪型はいかがなさいますか?」
夜会…。そういえば、そんなのあるの!?初耳なんだけど。確かに、アルベイン陛下とロンはそういう説明省きそう。…当日に言いそう。
3日後って、私が死ぬ予定の日の前日じゃん。時間ってはやいなぁ。
「う〜ん?てきとうに結べばいいんじゃない?」
「そうですか。」
彼女がそう言った瞬間、鏡越しの彼女がニヤリと笑みを浮かべた。そして、ポケットからなにかを取り出し私の束ねた髪を片手でおさえながら、何かをギラリと光るものを取り出し、私の髪に向かってそれを振り上げる。
私はいち早くそれに反応をし、椅子から少し避けて彼女がポケットから何かを取り出した手の手首を押さえつけた。
「…っ!?」
「エバ。これは、どういうこと?」
なんと彼女が持っているものは、銀のハサミ。切れ味は凄まじいものだろう。
おそらく、彼女は夜会を控える私の髪をズタズタに切りたかったようだけど…残念ね。私は死にかけたあの日から常に背後を警戒しているのよ!…まぁ、転生したあのときはしょうがないけど。
「こ、これ、は…?」
「それに、今日。私に嫌がらせを立て続けにしていたわよね?それは、どういうこと?」
「わ、私…は!」
彼女は私が掴んでいた手を振り払い、ハサミを両手に持ってこちらに突っ込んできた。間一髪に避けるものの、よろけてベッドへダイブしてしまう。
「しまっ」
「うわああぁぁ!!!」
エバはそんな声をあげてベッドで倒れる私に向かってハサミの先端を刺そうとしていた。私も両手でギリギリのところで抑える。
…っう。もう、力が…。
「ロン!」
「はい、お嬢様。」
私がその名を口にすると、空いていた窓からロンが登場をした。そして、すぐさまエバを取り押さえる。
「…っが!」
「ミアお嬢様にそのような行為をするなど…どういったおつもりでいらっしゃるのですか?」
ロンは冷たい眼差しで言い放った。エバは床に抑えつけられながらも、なんとか口を開いた。




