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5 馬車の中で/敵国への到着

ガチャっと馬車の扉を開ける音。中にいたのはなんと陛下だった。


「顔が死んでいるな。なにかあったのか?」


アルベイン陛下に嫌味を言われても、私は聞く耳を持つ余裕すらなく馬車の陛下の前の席に座った。ロンは私の目の前でアルベイン陛下の耳元で今起きた情報を手短に話す。


そしてロンは馬車の外へ出ると馬を走らせたのだ。その速さに思わず壁に頭をぶつけてしまう。


「あだだだ…!」


その衝撃で私はハッと我にかえってきた。


「へ、陛下!?」

「顔が元に戻ったな。お前も大変だな。」

「あはは。そうなのですよ…。ん?へ、陛下!ひとつ、大きな問題があります!」

「何だ?言ってみろ。」


陛下は私を試すような口調で言った。私は咳払いをし、口を開く。


「私の婚約者のパトリック殿下に婚約破棄をしてほしいと頼むのを忘れてしまい…。」

「それなら、先程俺が会いに行き、その王子とやらに言い残してきた。そいつの父親に許可を得たのだから問題はない。」

「そ、そうなのですね…。」


し、仕事がおはやい…!


思わず関心を受けてしまう。


仕事もできる、おまけに凄まじい美貌の持ち主。スタイルもよく、皇帝という地位の高い身分…。まるで理想を詰めた人みたい。


「…何か用か?」

「いえ!なんでもございません…ひゃっ!」


馬車が再び変な風に動いたため、変な声を出してしまった。こんなスピードでガタガタと動く必要はあるの?それとも、悪路を通っているだけ?


ドンと後ろの壁にぶつかってしまう。


「いったたたたたた…!」


もしかしてロンが運転が下手なの?…でも、目の前にいるアルベイン陛下はすずしい顔をしていながら、まるで微動だにしない。これが普通っていうの?


すると、またまた馬車が揺れ、私が前に崩れ顔面から倒れそうになったときだった。突如として、誰かに優しく包まれる。


へ、陛下!?な、ナイスキャッチ!


「あ…、ありがとう、ございます…。」

「お前は俺の隣に座っておけ。」


そう言って、陛下は自身が座っていた場所に座った後、隣の席をポンポンと叩く。ここに座れという意味なのだろう。


こんなに優しい人が小説の中でどうして、冷徹冷酷皇帝と呼ばれていたのだろう…。




***




「うわぁ!」


クリスチャー国に到着をする。その国はとても賑わっており、綺麗だった。その中でも、これから私が住まうお城はとても大きい。


「お前はこの先、この離宮で住んでもらう。」

「ではまず、陛下の愛人様にご挨拶せねばなりませんね。」


陛下は私の言葉に少し驚いた表情を浮かべた。


「そこまで知っていて、俺に求婚をしたのか?」


いや、あなただとは知らずに求婚はしたけれど。


アルベイン陛下には愛人が私以外に4夫人いらっしゃる。そして、私が5人目の愛人だ。


クリスチャー国の皇帝って歴代では愛人が10人や20人を超えていたから、5人しかいないアルベイン陛下は異例とされているのよね。女嫌いとまで噂されているぐらいだもの。


「はぁ…。何事も起きなきゃ、いいんだけどね。」


ここへ来るまでおよそ半日がかかってしまった。


悪役令嬢が死亡予定の日まで残り5日。


「何も起きなければいいのだけど…。」

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