32 物語は変えられる (1章 終)
ムーンストーン宮が死体まみれのことから、私はアルベイン陛下が住まう皇宮でしばらくの間、過ごすこととなった。
「お嬢様。今日はどんな髪型に致しますか?」
「てきとうでいいのに…。ま、エバに任せるわ。」
あの日から1日が過ぎた。私が死ぬ予定の日から1日たったのだ。そう、私は生き残ったのだ。
「よしよしよしよし!」
「何をなさっているのですか?」
廊下でガッツポーズをしていると、ロンが冷めたような目をして私に尋ねてきた。私は急に恥ずかしくなってしまい、思わずロンと目を逸らす。
「あ、ううん。なんでもないよ。」
「どこが具合が悪いのでは?」
「ほんとに大丈夫だから!」
ほんと不思議よねぇ。前までロンが暗殺者だって知って怪しい行動をしたら殺される!?とか思ってたのに今は全然彼のことを警戒していない自分が不思議でたまらない。
だって彼、両親にアルベイン陛下との婚約を反対されたときもエバに襲われたときも、エミルに殺されそうになったときも助けてくれたし。
暗殺者だからって、私を殺すとは限らないものね。
「…それよりも。」
それよりも、今、私が気になることは私を暗殺依頼した人物だ。誰かが私を殺そうとしている…。どこの誰なのか、なんの目的であるのか、今は全く分からない。
それに…あのとき。私が飛び降りた時。銃弾で紐が切れたのだ。だけれど、エミルは銃を持っていなかった。というか、あの場にいた全員が持っていなかったのだ。
もしかしたら、私を殺そうとした人が銃を撃ったの?でも、だとしたらすごく射撃が上手い人だろうし…。
「あぁ!もぉ!わかんない!」
「何をそんなに悩んでいるんだ?」
背後にはアルベイン陛下がいた。振り返ったすぐ側に美形が立っていたため、思わず驚いてしまう。
「アルベイン陛下!?なぜここに!?」
「ここは俺の住まう場だ。それとも何だ?俺がいては、なにか不備なことがあるのか?」
「い、いえ!別に何も!」
最近だけど、彼がとても優しく見えてしまう。なんだかんだ言って、私を助けてくれたし…。ロンという超優秀で一流のボディーガードもつけてくれたし、嫌がらせを受け殺されかけたのにエバを専属侍女にするって言い張る私の我儘も聞いてくれたし。
ーーでも今回、私が生き残ったことで分かったことがある。
物語は変えられる。本来、生き残るはずのなかった私は死ぬ予定日から生き続けている。これは物語からおおそれた現実だ。
アルベイン陛下に恩がある私は、アルベイン陛下が愛人全員を殺した原因を突き止めて、その未来を阻止してみせる!そして、セイントルと衝突し、クリスチャーが崩壊する未来をなんとしても回避するわよ!
あぁ、ちなみに、婚約破棄と国外への逃亡計画はなしにした。だって、今、こんなに裕福に幸せに暮らせているのだもの。それを捨てる必要なんてないじゃん?
私がそんなことをにこにことしながら考え、アルベイン陛下の書斎へ近づくとなにやら中から話し声が聞こえてきた。
「――――……」
ん?お取り込み中かな。
ブツブツとなにかが聞こえる。う〜ん。ここからじゃ、あんまりよく聞き取れないわねぇ。
…こういうのは、よくないんだけど…盗み聞きしちゃおうかしら。
私は扉に耳をくっつけ、盗み聞きをすることにした。すると、聞こえたのは思いがけない言葉だった。
「ミア・グリンフォードが怪しい動きをした瞬間、始末しろ。」
思わず顔を真っ青にしてしまった。…わ、私の暗殺!?嘘でしょ!?
扉から、私は気づかれないようそーっと歩き、部屋へと戻った。部屋では思わず足が抜けてしまう。
これは…もしや物語の強制力?それともアルベイン陛下とパトリック殿下の話し合いで陛下が殿下になにかされたとか、そそのかされた?
…撤回しよう。私は婚約破棄と国外逃亡をなんとしてもするわ。絶対に。でなきゃ…
「今度は執事に殺されるっていう死亡フラグが立っちゃったじゃない…!」
駄目よ、静香。ここで弱気になっては駄目。私は今までに2度も死を回避したのよ!…1度は死んだけど。
なんにせよ、怪しい行動を避けながら一か八かで陛下に婚約破棄を申し込む…。駄目だったら、国外へ逃亡するわよ!これぞ、完璧な計画ってやつね!
「こうなったら、あと一週間でもう荷物をまとめてしまうわよ!」
これにて一章終わりです(T ^ T)
ここまで追いかけてくれてまじ感謝です!
2章…頑張って執筆するので楽しみに待っていてくださいねー!




