30 謎の始まり
「捕えました。」
ロンは手を縛った状態のエミルを軽々しく肩に担いで、私が飛び降りた窓から軽々しく飛び降りてきた。
…いや、私死にかけたのにそこまで軽々しく飛び降りるのはなに!?怖すぎでしょ!
「ロン、足、大丈夫なの?」
「暗殺者であるこいつは下降訓練も受けているから、問題はないだろう。」
ロンの代わりにアルベイン陛下がそう答えた。いや、暗殺者って下降訓練なんかするの!?鬼畜ね!
「エミル…。」
私は捕えられているエミルを見てそう呟いた。エミルはうつむいてなにも言わない。
「クリスチャーへ戻るぞ。」
アルベイン陛下がそう言った。私達はその言葉に頷き、馬車へ乗ろうとしたときだった。
「どこへ行くんだい?」
私はその声に震えてしまった。振り返ればそこにいたのは、パトリック殿下。
「パトリックか。」
「やぁ、アルベイン。久しぶりだね。」
…2人とも名前呼び。意外と親しい中なのかしら。って、今はそんなことを考えている場合じゃないっ!
見つかった…。私、もしやこのまま処刑まっしぐらだったり…?いやいや。
「悪女!やっと見つけたぞ!」
「っげ!」
パトリック殿下の後ろからはリオンが走ってきた。その後ろから、レイモンドも走って登場をする。
「殿下。お取り込み中、こいつが無礼を働き申し訳ありません。」
レイモンドはパトリック殿下に謝罪をした。やはりレイモンドは普段から礼儀があるのだなぁと思う。リオンは皆無的にないけれど。
…というか私、侍女の格好してるよね。
「これのどこが私なの…?」
「言っておきますが、そんな容姿を兼ね備えた侍女はいませんからね?」
エバが私の耳元で囁いた。…ってことは、ミアのオーラが漂っていたってこと?流石小説のキャラ。メインキャラは全員顔がいいのね。
「殿下。すぐにかのものを捕えますので」
「誰を捕らえると?」
アルベイン陛下は酷く冷たい声でそう言った。私でさえも身震いをしてしまう。…これが小説の中での悪役ポジの威圧なの?
「リオン、レイモンド。ここは私が行く。」
パトリック殿下はそう言って、階段から降りてきた。そしてアルベイン陛下に言う。
「アルベイン。我々2人で話をしようじゃないか。それなら文句はないだろう?」
すると、パトリック殿下はアルベイン陛下の肩を掴み耳元でなにかを言った。それは私には聞こえなかった。アルベイン陛下は驚いた様子もなく目を瞑ってため息をついていた。
「分かった。」
アルベイン陛下はそう言った。パトリック殿下とアルベイン陛下の2人以外の者たちは全員驚いた様子だ。勿論私も驚いている。
パトリック殿下はアルベイン陛下になにを言ったの?
「ロン。ひとまずクリスチャーに戻れ。ミアの護衛を頼む。」
「御意。」
ロンはそう言って、エミルを担いだまま馬車へと向かった。その間、エミルはフッと諦めたような笑みを浮かべた。
ボリっという音がした。その瞬間、エミルがもがき苦しむ。
「あがっ…っぅ。」
「…っ!?」
ロンがいちはやくそれに気づき、担いでいたエミルを下ろし、地面へと横たわらせた。脈を測ればもう脈などはない。
「エミル…!?」
「もう息はありません。」
ロンの言葉に私は口をポカンと開けて固まってしまった。どういうこと?今のこの一瞬で、どうやってエミルが亡くなったの?
「暗殺者は暗殺の依頼が失敗した場合、自害をするのが規則です。その自害のため、事前から口元に毒物をいれておき、歯で思いっきり食いしばることでその毒物を放出させるというものがあるのです。」
その言葉にこの場にいた全員が驚きの表情を浮かべた。そんな規則があることにも驚きたが、おそらくみなが驚いたのはそこではないだろう。
…誰かが私の暗殺依頼をしたっていうの?
「お前か?」
アルベイン陛下はパトリック殿下に問いかけた。
「いや、それについては私は関与を一切していないよ。仮に私が暗殺依頼でもしてしまえば、民からはんかんを受けてしまうおそれがあるからね。」
パトリック殿下はそこまで考えるお方…。リスクが嫌い。だからこそ、そんな真似はしないだろう。
…だったら、一体誰がしたっていうの?




