28 気遣い感謝致します
どうしても、10月以内に1章を終わらせたくてしょうがないので、駆け足になります。
「…アルベイン、陛下?」
私を抱きとめてくれたのはアルベイン陛下だった。相変わらずの表情。焦った様子も見受けられない。
…流石だわ。
陛下は私を数秒見つめた。そして安心したのか安堵のため息をつく。
「あの、もう下ろしてくださって大丈夫ですよ?」
私がそう言っても陛下は無言のままである。
…ずっとこのままだと恥ずかしいのだけれど。
「なぜそのような格好を?」
私はその言葉に思わず今、自分が来ている服を見た。…セイントル王城の侍女の服。
「あぁ。この格好をしていれば、逃げ切れると思いまして…。」
「それはどういう意味だ?」
陛下はとても低い声でそう言った。目が怖い。…怒ってる?なんで?でも、これ、正直に答えないと殺されたりする…!?ここは、大人しく答えないと。
「実は私…攫われて悪行を大衆の前で公表され地下牢に入れられてしまいまして。それでなんとか脱出したんですけど、騎士たちが私を探していまして。この格好をしていればちょっとはまけるかなぁって。」
「だいたいの状況は理解した。」
…理解?今の説明だけで?やっぱりアルベイン陛下は天才ね。
「…怪我をしているのか?」
「え?あ〜っと…はい。しています。」
これだけ血が流れているものね。怪我してないとは言えないわ。
アルベイン陛下は近くのベンチで私を下ろした。すると、馬車の中から包帯を持った女が近づいてくる。
「エバ!?」
「お嬢様!」
エバはとても息切れていた。冷や汗もかいているし、相当私のことを心配していてくれていたのだろう。
「よかった…。お嬢様が無事で…!」
「あなたも無事でよかったわ。」
「…怪我が酷いですね!待ってください!すぐに手当を」
エバがそう言いかけるとアルベイン陛下が止めた。そしてエバから包帯と救急箱を取り上げる。
「俺がやる。お前は馬車で休んでいろ。」
この発言に私とエバはそろって目をぱちぱちとしていた。アルベイン陛下が!?毛嫌いしているはずの女性を手当なんて誰が想像しただろうか。エバは陛下にお辞儀をするとともにすぐに馬車の中へと戻っていった。
アルベイン陛下が私の指へと触れる。
「…っ。」
「痛むか?」
「少しばかりですが…。」
陛下は私を気遣ってくれていたのか、とても優しく触れてくれた。だけれど、私はくすぐったく感じてしまう。
…それになんなのこの至近距離は!美形の顔が私の目の前にあるのだけれど!
「どうした?顔が赤いが…熱でもあるのか?」
「い、いえ!私は大丈夫です!」
恥ずかしさで痛みが消えた気がするわ。だって、こんな美形が至近距離で私に触れてるんだもん。ちょっとドキッとしちゃうのが自然の原理じゃない。というか私じゃなきゃ、こんなのキュン死していたわよ。
私は恥ずかしさを出さないために深呼吸をした。そして、セイントルの王城についてある大時計を見つめる。
時間は12時8分。私が死ぬ予定の日。先程死にかけたけれど、なんとか生き残ることができた。
ん?待てよ。
「陛下!エミルが実は暗殺者で私のことを殺そうとして…とにかくここは逃げましょ」
すると陛下は私の肩をポンポンと優しく叩き「落ち着け。」と言った。私はその言葉通り一度冷静になる。
「大丈夫だ。今頃、ロンが向かっている。」
「あぁ。ロン・エディは暗殺者ですもんね。なら、大丈夫そうです。」
私の言葉に陛下は目を見開いた。あれ?私…なにかまずいこと言っちゃったかな。
「どこからその情報の得たのやら。」
「…!?」
そうだった。私はロンが暗殺者と知っているのは小説に書いてあったから。本来、ミア・グリンフォードがそれを知っているわけがない。
「…秘密です。」
「そうか。まぁ、いずれは白状してもらうがな。」
いずれって何?怖っ!
「…ロンが強い暗殺者であっても、エミル相手に大丈夫でしょうか?」
「ロンがあの侍女は自分が相手すると言ったんだ。大丈夫だろう。」
「…え?彼女が私を攫ったってよく分かりましたね。」
「あの侍女はロンが昔、会ったことがあるらしいからな。」
…暗殺者繋がりで?そういうこともあるもんなんだ。すご。
「会ったことがあるとしても、どのような情報で彼女にたどり着いたんです?」
私の質問に陛下は一呼吸置いて答えてくれた。
「ムーンストーン宮でエバとエミル、ロン以外の使用人が全員殺されていた。」
「…え?」
「その者たちの殺害方法は糸であった。糸での殺人にロンは心当たりがあったらしいからな。」
もしかして、エミルが言っていた「掃除。」っていうのは殺人という意味だったの?私が夜会へ言っている間、ムーンストーン宮の人間を殺していた…。凄い話。
「あの侍女が目覚めてエミルに攫われたと聞いて確信を持ってここへ訪れた、これが経緯だ。」
「…ロンは彼女に勝てるでしょうか。」
私が俯きながらも聞くと陛下は口角を上げて答えた。
「あいつが負けるはずないだろう?」




