20 不穏な予感
「読書感想文を大学で書くってすごいねぇ。」
妹が玄関から出ようとする私を見ながらもそう言っていた。
「ん〜?意外とあるもんだよ。遥香も将来やるんじゃない?」
「私はその学校選びませ〜ん。」
「あ、そう。行ってきま〜す!」
私は家を出て本屋に向かった。大学でやる読書感想文のための本を買いに。
ん〜?イマイチ紹介できる本がないのよねぇ。それにポストに入ってた本屋のチラシを見て行きたくなっちゃったし。
その本屋は町中にスッとあった。人は少ない。
どれにしよう…。でも、読みやすいのがいいよね〜。はやめに出したいし。なら小説がいいのかなぁ。
ふと目に入ったのは、なぜか古本コーナーだった。自分でもなぜそちらに引かれたのか分からない。だけど体が勝手に動いてしまったのだ。
…なんだろう、この本。
手に取ってみるとそれは表紙絵も裏表紙にあらすじも描かれていない本だった。今どきの文庫サイズの本にしては珍しいなぁと心の底から思う。
ただ表表紙にはこう書いてあった。『巫女のセリーナ』と。
「…。」
私はその本に惹かれてしまい、その本を買うことを決意した。
***
「…!?」
ハッと目が覚める。
…えぇと、私は確か…そう。エミルに…。
「やぁ?お目覚めかい?」
陛下が私を見下ろしながらそう言った。私は両手を拘束された状態であり、身動きがとれないでいる。
…鎖?の手錠?硬っ!というか、パトリック殿下!?
ひとまず落ち着きましょう…。
「パトリック殿下。これはどういうことでしょうか?」
「どういうこともなにも、君に罰を与えるんだよ。」
「罰?見に覚えがありませんが。」
私の言葉にパトリック殿下は一瞬だけれど、わずかに無の表情をした。すぐに笑みを取り戻し口を開く。
「では、君が今までにどんな悪行をしてきたのか、今この場で教えてあげようか。」
すると、なにやら大勢の声がした。周りを見ると、セイントルの貴族たちがいる。私を謙遜とした目で見ていた。
まさかここって…セイントルの王城?でも、こんなにはやく着くなんてあり得な…。そういえば、小説の中でパトリック殿下はセリーナにクリスチャーに向かう近道を知っているって言ってたな。
にしても、こんなにはやく着くことあるの?というかこの場面って…まるでーー
ーーあの小説で悪役令嬢が断罪をされているときみたいじゃない。
***
「陛下。城中を組まなく探しましたが、お嬢様は見つかりません。」
「…ムーンストーン宮へ向かう。ミアがいなくなったことを悟られぬよう、裏口から出るぞ。」
「御意。」
裏口へ出ようとするとベンチにくくりつけられるミアの侍女がいた。名は確かエバだったか?
「気絶しているだけのようです。」
「…。」
侍女とロンを馬車に乗せ、ムーンストーン宮へ向かった。
ムーンストーン宮へ入ると思わぬ光景が目に入ってしまった。
なんとムーンストーン宮の使用人たちは死体となっていたのだ。ムーンストーン色をしていた部分は真っ赤に染まってしまっている。
「…。」




