ep.7 開店初日、お客はゼロ
看板を出してから、シャーロットは店の中を何度も片付け直した。
すでに整っている調合台を拭き、乾燥棚の薬草の向きを揃え、扉の前を掃く。手を動かしていないと、やることのない時間が長く感じられた。
朝のうちは、畑へ向かう村人が何人か通りかかった。看板に目をやる者もいたが、足を止める者はいない。会釈をすると、戸惑ったように返してくる程度だった。
昼を過ぎても、店の前を素通りする人が続いた。
子どもが二人、戸口の外からこっそり中を覗き込んでいたことがあった。シャーロットが目を合わせると、驚いたように顔を引っ込め、笑い声を残して走り去っていく。
「……見られてはいるんだよね」
誰もいない店内で、独り言がこぼれた。
夕方近く、グレアムが畑帰りに立ち寄った。戸口から中をひと目見て、棚に並んだ薬草を眺める。
「繁盛してるか」
「まったく」
正直に答えると、グレアムは特に慰めるでもなく、そうかと短く返しただけだった。
「村の連中は、新しい店にすぐ財布を開くような性分じゃない。しばらくは様子見だろうな」
「そうですか」
「悪い話じゃない。見られてるってことは、覚えられてるってことだ」
それだけ言って、グレアムは自分の家へ帰っていった。
日が沈みかけ、シャーロットは戸を閉める前に店内を振り返った。
埃を払った調合台も、並べた薬草も、今日は一度も使われないままだった。
売上はゼロ。
シャーロットは戸を閉め、鍵をかけた。
看板だけは外さず、雨に濡れないよう軒下へ寄せておいた。




