ep.56 今日も薬屋を開けます
朝の光が、カーテンの隙間から差し込んでいた。
シャーロットが目を覚ますと、二人の部屋の方からもう物音がしていた。イリスの寝台がきしむ音、カリナが戸を開ける音。
台所に立つと、鍋にはすでに湯が沸いていた。
「先にやっておいた」
カリナがパンを切り分けながら言う。イリスは椅子に座り、行儀よく待っていた。
三人分の器を並べ、簡単なスープと、昨日の余りのパンで朝食を済ませる。
特別なことは何もない、いつもの朝だった。
食べ終えると、二人はそれぞれの部屋へ戻り、身支度を整えて出てきた。
カリナは置き薬用の薬を確かめ始め、イリスは棚から木のカップを一つずつ取り出して並べていく。
シャーロットは裏の畑に出て、朝露の残る薬草を確かめた。
踏み荒らされた畝も、今ではすっかり元通りになっている。目印をつけたままの一角にも、いつも通り手をかざした。
店に戻ると、水を張った桶で冷やしておいた小樽を運び込む。
カリナがその横で、カップの並びを整え直していた。
軒先のベンチは、朝日を受けてまだ少し湿っていた。
布で拭いておくと、イリスがさっそく腰かけて足を揺らす。
「今日も、お客さん来るかな」
「来るよ、きっと」
一通りの準備が終わると、カリナが戸口の前に立ち、看板に手をかけたシャーロットを振り返った。
「シャーロットさん、準備できたよ」
シャーロットは看板を持ち上げ、軒先の定位置へ立てかけた。
「はい。今日も開店です」
そう言って、扉を大きく開け放つ。
朝の風が、店の中へ流れ込んでいった。




