ep.54 壊れた店をみんなで
戦いの翌日から、村のあちこちで槌の音が響き始めた。
薬屋の周りも、まったく無傷ではなかった。
軒先のベンチは片側がずれ、外壁にも小さなひびが入っている。裏の薬草畑では、何株かが折れていた。
「うちも手伝うぞ」
朝一番にやってきたのは、ダグだった。傾いたベンチを一目見て、道具箱を抱え直す。
「これくらいならすぐだ」
トマスとリゼットも、炊き出し用の鍋を運んできた。
店先に大鍋を据え、片付けに追われる人たちへ温かい汁物を振る舞っている。
「動く人には、まず腹ごしらえさせないと」
村人と、まだ滞在していた冒険者たちが入り混じって作業を進めていく。
崩れた柵を直す者、屋根を補修する者、瓦礫を片付ける者。誰が指示したわけでもないのに、自然と役割が分かれていった。
シャーロットは、薬草畑の前にしゃがみ込んでいた。
「これ、また一から?」
カリナが隣にしゃがんで、折れた茎を指でつまむ。
「そうなるところもあるね。でも、根が残ってる株もあるから、全部じゃないよ」
イリスは、掘り返された土を小さな手でならしながら、真剣な顔をしていた。
「ここ、まっすぐにする」
「上手」
三人で土をならしていると、ダグが直し終えたベンチを軒先へ据え直した。
「ほら、これでもう傾かないぞ」
試しに座ってみたイリスが、満足そうに足を揺らす。
昼過ぎには、片付けていた小樽も引っ張り出された。
シャーロットは残っていた果実を刻み、疲れを軽くする薬草をほんの少し加えて、水へ入れる。
「今日はまだ少しだけど」
「また飲める!」
イリスが声を弾ませる。
夕方になっても、あちこちで作業は続いていた。
槌を打つ音。木材を運ぶ声。食事を配るリゼットの声。
シャーロットは、まっすぐに立て直されたベンチに腰を下ろし、少しずつ元に戻っていく店の様子を眺めていた。




