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ep.51 エリアヒール

森の奥で、シャーマンが再び杖を掲げようとしている。


 このままでは、次の一撃で今の比ではない被害が出る。倒れている者たちを、一人ずつ治している時間はなかった。


 シャーロットは深く息を吸った。


 普段は使わない、範囲全体へ及ぼす回復魔法。魔力の消費が桁違いに大きい。


 けれど、今それを惜しんでいる場合ではなかった。


「誰か、時間を稼いで!」


 叫んだ声に、近くにいた剣士たちが前へ出た。シャーマンへ向かって斬り込み、次の魔法を撃たせまいと動く。


「今しかない……!」


 シャーロットは両手に魔力を集中させた。


 一人へ向けるはずの回復の力を、倒れている者たち全員へ広げていく。


 身体の奥から、凄まじい勢いで魔力が引き出される。指先が震え、視界の端がわずかに揺れた。


「――届け」


 光が、倒れていた者たちを一斉に包んだ。


 浅い傷は見る間に塞がっていく。深い傷を負っていた者も、流れ出ていた血が止まり、荒かった呼吸が落ち着きを取り戻していった。


 完全には治らない。それでも、命を繋ぐには十分だった。


「動ける人から離脱! 動けない人は担いで下がって!」


 光が収まると同時に、シャーロットはその場に膝をつきそうになった。


 足に力が入らない。頭の芯が、鈍く痺れている。


「大丈夫か!?」


 近くにいた男が支えようとするのを、シャーロットは首を振って断った。


「まだ、大丈夫です……それより、動ける人を先に」


 言葉とは裏腹に、視界がぼやけかけていた。


 膝に手をつき、深呼吸を繰り返す。


 負傷者たちが次々と後方へ運ばれていく。シャーロットはその一人一人を目で追いながら、自分の中に残った魔力の少なさを、いやというほど自覚していた。


 森の奥では、シャーマンがまだ次の機を狙っている。


 このままでは、もう長くは持たない。


 震える指先で、シャーロットは道具袋の中を探った。

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