ep.50 ゴブリンシャーマン
森の奥から現れたのは、これまでのゴブリンとは明らかに違う一体だった。
粗末な布をまとい、骨や石で飾られた杖を握っている。ほかのゴブリンより一回り小さいその個体が杖を掲げると、周囲のゴブリンの身体が淡い光を帯びた。
「なんだ、あれ……!」
前線から声が上がる。
光をまとったゴブリンたちの動きが、一斉に速くなった。振るう武器の勢いも、明らかに増している。
「動きが変わった! 気をつけろ!」
シャーロットは防衛線の様子を目で追った。
強化されたゴブリンの一撃を受け、盾ごと弾き飛ばされる男がいる。
「そっち、下がって!」
叫びながら駆け寄ろうとした矢先、シャーマンが杖を村の方へ向けた。
「危ない、伏せて!」
その声が届くより早く、杖の先に炎が渦を巻き、複数人が固まっていた場所へ放たれた。
爆発に似た衝撃が地面を揺らす。
土煙が晴れると、そこにいた四、五人がまとめて吹き飛ばされ、地面へ倒れていた。
「くっ……!」
シャーロットは息を呑んだ。
これまでのように、一人ずつ順番に見ていく余裕はない。同時に、複数の負傷者が出ている。
駆け寄って、一人の容態を確かめる。
腕からの出血。隣では別の男が、足を押さえてうずくまっている。さらにその奥には、意識が戻らないまま倒れている者もいた。
「誰か、こっちも!」
「あっちも酷い!」
あちこちから声が飛び交う。
一人ずつ順番に回っていては、間に合わない。
シャーロットは倒れた者たちを素早く見渡した。
出血の多い者。痛みで動けない者。意識のはっきりしない者。
短く息を吸い、もう一度全員へ目を走らせる。
森の奥では、シャーマンが再び杖を掲げようとしていた。




