ep.47 薬屋を救護所に
翌朝、シャーロットは店の中の配置を一から見直した。
普段使っている椅子や小さな机を隅へ寄せ、代わりに人が横になれるだけの床の広さを確保する。棚の薬は、すぐ使う物とそうでない物とで分け直した。
「これ、こっちに並べればいい?」
カリナが、包帯の束を抱えて聞いてくる。
「うん。使う順に、手前から並べて」
イリスは水差しとカップを、いくつも棚から運び出していた。危なっかしい足取りだったが、割らないよう慎重に運んでいる。
「これくらいでいい?」
「十分。ありがとう」
濃縮ポーションの瓶は、ほかの薬と混ざらないよう、手の届く棚の奥へまとめて並べた。数が多くない分、本当に必要な場面のために取っておくつもりだった。
作業の合間、シャーロットは二人の手を止めさせ、寝台の縁に並んで座らせた。
「戦いが始まったら、二人はここにはいられない。ほかの子どもたちと一緒に、村長さんの家へ避難してもらう」
カリナの表情が、わずかに強張った。
「シャーロットさんは?」
「私はここに残る。怪我をした人を診るから」
「危なくないの?」
「戦うわけじゃないから、大丈夫。ただ、二人が近くにいると、そっちが心配で集中できなくなる」
カリナはしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「分かった。でも、終わったら、ちゃんと帰ってきて」
「もちろん」
イリスがカリナの袖を掴み、シャーロットの顔を見上げた。
「約束?」
「約束」
差し出された小指へ自分の小指を絡めると、イリスはようやく表情を緩めた。
準備を終えた店の中は、いつもの薬屋とはまるで違う姿になっていた。
床に並べた寝床。山積みの包帯。すぐに取り出せるよう揃えた薬瓶。
戸口から差し込む夕方の光が、そのすべてを照らしていた。




