ep.43 いなくなって初めて分かった
故郷へ向かう道すがら、四人はどこかで一泊しようと、噂に聞いた村へ立ち寄った。
「休憩どころとしては悪くないって話だが」
ダリオが呟きながら村へ入ると、思っていたより賑わいがあった。
食事処からは湯気が上がり、旅装の男が店先で椀を傾けている。その軒先には、「宿泊できます」と書かれた小さな板も掛かっていた。
「装備の修理までできるのか、この村」
ガレスが作業小屋の看板を見て、感心したように言った。
ミレーヌは黙って周囲を見回している。
食事処で椀を受け取る四人へ、リゼットが軽い調子で言った。
「うちも助かってますけど、薬屋さんができてから、この村変わったんですよ」
「薬屋?」
「ええ。若い女の人がやってて。子ども二人と一緒に」
ダリオの手が、椀を持ったまま止まった。
食事を終え、村を歩く途中、四人は薬屋の前を通りかかった。
看板には、「ノーラ薬房」とある。軒先のベンチには、子どもが二人腰かけていた。
戸口から出てきた女と、目が合った。
「……シャーロット」
ダリオの声が掠れた。
シャーロットも、しばらく言葉が出なかった。見慣れた顔ぶれが、こんな場所に立っている。
「……久しぶりですね」
短く、それだけ返した。
ガレスが目を逸らし、ミレーヌは何か言おうとして、口を開けたまま止まった。
エステルは、初めて会うシャーロットを遠慮がちに見ていた。
ダリオが深く息を吐き、頭を下げた。
「お前が何をしてたのか、いなくなってから分かった」
降格したことも、護衛を守れなかったことも、口にはしなかった。
「悪かった」
短い謝罪だった。
ガレスとミレーヌも、続けて小さく頭を下げる。
シャーロットは、しばらく黙っていた。責める言葉も、許す言葉も、すぐには出てこなかった。
「……もう、いいです」
それだけ言うと、ベンチに座っていたイリスが、様子をうかがうように立ち上がった。
カリナがその手をそっと引く。
「お客さんですか?」
カリナが尋ねると、シャーロットは首を横に振った。
「知り合い。もう行くところだから」
ダリオはそれ以上何も言わず、頷いた。
「達者でな」
「そちらも」
四人は長居せず、村を出ていく道を歩き始めた。
ミレーヌだけが一度振り返ったが、何かを言うことはなかった。
シャーロットは、その背中が見えなくなるまで見送った。
それから、ベンチの二人へ向き直る。
「お待たせ。晩ご飯にしようか」
「うん!」
イリスが元気よく答え、カリナはシャーロットの顔を少しだけ覗き込んだ。
「平気?」
「平気だよ」
三人は、いつも通り店の中へ戻っていった。




