ep.41 薬屋の前にベンチを
以前、軒下へ引きずり出した古い長椅子は、雨風にさらされてすっかりぐらついていた。
「これ、そろそろ危ないかも」
カリナが座面の端を押すと、みしっと嫌な音がした。イリスがその上に座ろうとして、シャーロットに止められる。
「今は座らないで。壊れそう」
作業小屋のダグを訪ねると、彼は長椅子を一目見て顔をしかめた。
「こりゃ、直すより新しく作った方が早いな」
「お願いできますか?」
「材料があれば、そう手間じゃない。薬箱の礼もあるしな」
数日後、しっかりした木の脚に、幅の広い座面をつけた長椅子が、薬屋の軒下に据えられた。
以前のものとは比べ物にならないくらい安定している。
「座ってみ」
ダグに促され、イリスが真っ先に飛び乗った。
「ぐらぐらしない!」
「そりゃそうだ。ちゃんと組んだからな」
カリナも隣に腰かけ、足をぶらぶらさせた。
その日の午後には、早速使われることになった。
畑仕事帰りの男が、いつものように樽ポーションを一杯もらい、新しいベンチへ腰を下ろす。
「お、新しくなったのか」
「今日からです」
「前のよりいいな。座り心地が違う」
夕方には、食事処へ向かう旅人が、ベンチで一休みしていく姿もあった。
「この村、休めるところが多いな」
「食事もできますし、泊まるところもありますよ」
シャーロットがそう答えると、旅人は感心したように頷いた。
日が暮れる頃、カリナとイリスはベンチに並んで座り、店じまいをするシャーロットを待っていた。
「ここ、わたしたちの席にしていい?」
イリスが聞くと、カリナが横から口を挟んだ。
「みんなの席でしょ。独り占めしないの」
「わかった」
戸締まりを終えたシャーロットは、二人の間に空いた場所へ腰を下ろした。
三人並んで座ると、ベンチはちょうどいい広さだった。




