ep.4 数日で尽きる貯金
安宿の三日分の宿代を払うと、革袋はずいぶん軽くなった。
シャーロットは冒険者ギルドの掲示板の前に立ち、貼り出された依頼と求人を端から確認していく。
『白魔法使い急募』
その文字に目を留めたが、詳細を読んで肩を落とした。
大きなパーティーからの募集で、面接と適性確認だけでも数日かかると書いてある。別の紙には「経験三年以上、常設パーティー所属希望者のみ」とあり、これも今すぐの採用ではない。
受付でも聞いてみたが、返ってくる答えは同じだった。
「今すぐ働ける方でしたら、単発の依頼になりますね。パーティー募集は選考に時間がかかりますので」
単発の依頼欄を見る。
薬草採取、荷物運び、街道の見回り。一人で受けられるものは、どれも報酬が安い。白魔法使いとしての腕を活かせる依頼は、たいてい複数人のパーティー向けだった。
それでも、受けられる単発依頼を選んで一つずつこなした。
一日、また一日と過ぎていく。
宿代、食費、依頼に必要な細かな出費。減っていく貯金を頭の中で数えながら、シャーロットは唇を引き結んだ。
四年間、Aランクパーティーで働いてきた実績がある。治療も支援も、人並み以上にこなせる自信もある。
それでも、今すぐ雇ってくれる場所はどこにもなかった。
六日目の朝、革袋の中身を数えて、シャーロットは思わず息を吐いた。
王都に留まって採用を待つには、資金が足りない。かといって、これ以上安い依頼をこなしても追いつかない。
ギルドの前で考え込んでいると、掲示板の隅に貼られた小さな紙が目に入った。
荷馬車の相乗り募集。
行き先は、街道から少し外れた田舎の村々を回るという、地味な内容だった。運賃も安い。
御者に声をかけると、初老の男は特に驚いた様子もなく頷いた。
「途中まででいいなら、乗せてやるよ。座る場所は荷物の隙間だけどな」
王都に残る理由は、もうなかった。
荷台に乗り込み、積み荷の隙間に腰を下ろす。背負っていた鞄を膝に抱え、シャーロットは小さくなっていく王都の門を振り返った。
御者に、街道沿いで静かな村はないかと尋ねると、少し考えてから森と山に近い村の名前を挙げてくれた。
「宿もろくにない、何もない村だけどな」
「……それでいいです」
荷馬車は緩やかに揺れながら、王都から遠ざかっていった。




