ep.39 装備の手入れもできます
村外れの作業小屋から、金属を打つ音が響いていた。普段は農具や荷車の修理をしている、寡黙な男の仕事場だった。
そこへ、旅装の女がおずおずと顔を出した。
「あの……ここ、道具の修理とかできますか?」
男は手を止め、女の持ってきた杖を一瞥した。金具が緩み、先端の留め具が今にも外れそうになっている。
「杖なんて、直したことねえけどな」
「駄目、ですか?」
男はしばらく杖を眺め、金具の作りを確かめてから、道具箱を引き寄せた。
「まあ、留め具を締め直すだけなら、荷車の金具と大して変わらん。やってみるか」
慣れた手つきで金具を外し、緩んだねじを締め直していく。ついでに、削れかけていた革帯も張り替えた。
「こんなもんでどうだ」
渡された杖を、女は何度か振ってみて頷いた。
「しっかりしてる。ありがとうございます、助かりました」
女が代金を払って去っていくと、男は使った道具を一つずつ箱へ戻した。
その日の夕方、シャーロットが薬箱の相談で立ち寄ると、男は珍しく満足げな顔をしていた。
「さっき、旅人の杖を直してやったんだ」
「そうなんですか」
「農具を直すのと、そう変わらんもんだな。刃を研ぐのも、革帯を替えるのも、留め具を直すのも」
「新しい武器とか、作れたりします?」
「そりゃ無理だ。俺は鍛冶屋じゃない。あくまで直すだけだ」
そう前置きしながらも、男の口ぶりには、少し張り合いのようなものが感じられた。
数日後には、作業小屋の前に小さな板が立てられていた。
手書きの文字で、「刃研ぎ・道具直し、承ります」とだけ書かれている。
その日の昼、腰に剣を提げた冒険者が看板の前で足を止めた。
刃を確かめるように鞘から少し抜き、作業小屋の戸を叩く。
しばらくすると、村外れから再び金属を打つ音が響き始めた。




