ep.35 AランクからCランクへ
それから幾つかの依頼で、同じような綻びが続いた。
討伐数が予定に届かず、依頼主から渋い顔をされたこともあった。ガレスの負傷で予定より長く滞在し、追加の費用がかさんだこともあった。
エステルは負傷者の手当てには慣れていったが、戦況全体を見ながら三人を管理することまでは、どうしても手が回らなかった。
その中でも、決定的だったのは護衛依頼だった。
商人の荷馬車を、隣町まで送り届ける仕事。
道中、街道沿いに潜んでいた魔物の群れに襲われた。
「片付けるぞ!」
ダリオの号令で、四人は迎撃に回った。
数はそう多くない。危なげなく一体、また一体と倒していく。
だが、群れの一部が横合いから回り込み、荷馬車の方へ向かっていることに、誰も気づかなかった。
「馬車が!」
エステルの声で振り返った時には、御者が悲鳴を上げて馬車から転げ落ちていた。荷は散乱し、幌が引き裂かれている。
慌てて駆けつけたが、遅かった。
「なんで、誰も見てなかったんだ!」
依頼主の商人が声を荒らげる。
討伐自体は成功していても、護衛対象を守れなければ意味がない。
「申し訳ありません」
ダリオが頭を下げても、傷んだ荷と、怯えた御者の様子は元に戻らなかった。
ギルドに戻ると、受付の担当者は淡々と書類を読み上げた。
「護衛対象の損害について、依頼主から違約金の請求が出ています。加えて、直近の依頼達成状況を確認させていただきましたが……」
紙をめくる音が、やけに大きく響いた。
「討伐数の未達、負傷による工程遅延、依頼失敗。これらを踏まえまして、パーティーのランクを見直させていただきます」
「見直しって……」
「Aランクから、Cランクへの降格となります」
その場が静まり返った。
ダリオはしばらく、渡された書類を見つめたまま動かなかった。指先が、紙の端を強く握りしめている。
「……そうですか」
短くそれだけ返し、書類を受け取った。
ギルドを出ると、誰も口を開かなかった。
ガレスは肩を押さえ、ミレーヌは杖を抱えたまま俯いていた。
エステルだけが何か言おうとして、結局、言葉を飲み込んだ。
夕暮れの中、四人はそれぞれ違う方向を見たまま、しばらく立ち尽くしていた。




