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ep.29 薬草を育てるところから

 裏の畑に並んだ薬草を眺めながら、シャーロットはふと思いついた。


 回復魔法は、傷ついた身体へ働きかける。薬草も生き物なら、ごく弱い魔法をかけ続けることで、何か変わるかもしれない。


 半信半疑のまま、畑の隅にある一株へ、そっと手をかざしてみた。弱い回復魔法をかけながら、薬草へ魔力を馴染ませていく。


「これくらい、かな」


 加減が分からず、つい多めに魔力を流してしまう。


 次の日の朝、様子を見に行くと、その株だけが萎れていた。


「……やりすぎた」


 葉先が黒ずみ、茎もぐったりと垂れている。他の薬草と比べると、一目で分かるほどの差だった。


 がっかりしながらも、シャーロットは別の株で量を減らして試すことにした。


 今度はほんの少しだけ、指先から漏れる程度の魔力を、毎朝同じように馴染ませていく。


 一度にたくさん与えるのではなく、少しずつ。焦らず、様子を見ながら。


 数日続けても、目に見える変化はなかった。葉の色も、大きさも、これまでと大差ない。


「気のせいかな」


 そう思いながらも、シャーロットは畑の隅にあるその株へ印をつけ、翌朝も同じように魔力を流した。


 薬屋の仕事の合間に畑へ足を運ぶ日が続いた。忙しい朝でも、その一株だけは忘れなかった。


 一週間ほど経った朝、いつものように葉へ触れると、わずかに硬さが違う気がした。


 まだ確信は持てない。


 シャーロットはもう一度、指先で葉の感触を確かめた。

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