ep.26 三人で囲む食卓
夕食の支度をしながら、シャーロットは鍋の中身を数回かき混ぜて、ふと手を止めた。
いつもなら、器は一つで済んでいた。
棚から茶碗を三つ取り出す。数が合っているか、何度も確かめてしまう。
「イリス、お皿並べるの手伝って」
カリナが台所から声をかけると、イリスが小走りでやってきて、危なっかしい手つきで木の匙を並べていく。
「これ、こっちでいい?」
「うん、それでいい」
小さなテーブルに、三人分の椅子が並んだ。以前は椅子一つで足りていた場所に、もう二脚を運び込んだばかりだった。
「いただきます」
イリスが真っ先に手を合わせる。カリナも続き、シャーロットは少し遅れて同じ仕草をした。誰かと声を揃えて食事を始めるのは、久しぶりのことだった。
「おいしい」
イリスが口いっぱいに頬張りながら言う。
「よく噛んで。喉に詰まるよ」
カリナが妹をたしなめながら、自分も匙を口へ運ぶ。
「薬草、味付けに使ったりするの?」
「そういうのもあるよ。今日のは、普通の香草だけどね」
「へえ……今度、教えて」
「仕事の手伝いなら、いくらでも」
カリナは小さく頷いて、また匙を動かした。
食事の後、シャーロットが器を洗おうとすると、カリナが先に手を伸ばした。
「私がやる」
「無理しなくていいのに」
「これくらい、平気」
結局、二人並んで洗い物をすることになった。イリスは眠くなったのか、椅子に座ったまま船を漕いでいる。
「イリス、寝るなら部屋で寝て」
「ねむくない……」
そう言いながらも、目はほとんど閉じかけていた。カリナがその手を引いて、部屋まで連れていく。
一人残ったシャーロットは、洗い終えた茶碗を三つ、棚に並べて置いた。
明日の朝も、この数だけ用意すればいい。
それだけのことが、やけに自然に思えた。




