↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/33

ep.22 薬代は治ってから

 イリスの呼吸は、粉薬を飲ませてから幾分か落ち着いていた。


 それでも震えが続いている。


 シャーロットは布越しに軽く両手をかざし、こわばった身体の強張りだけを解いてやった。熱そのものは消えない。震えが少し収まっただけだった。


 カリナは寝台の脇に座り込んだまま、動こうとしなかった。濡れた髪も、そのままだ。


「あなたも着替えないと。風邪ひくよ」


「平気」


「平気には見えないけど」


 言い返そうとしたカリナが、口をつぐんだ。


 シャーロットは乾いた服と毛布を持ってきて、そのまま押しつけるように渡した。


「イリスちゃんは見てるから、着替えてきて」


 しばらく黙っていたカリナは、ようやく立ち上がり、隣の部屋で着替えを済ませて戻ってきた。


 乾いた服に着替えても、寝台のそばから離れる気配はない。


 温めた粥を運んでくると、カリナは器を見て、すぐには手を伸ばさなかった。


「これも、あとでお金……」


「今はいい。まず食べて」


「……」


「薬代のことは、治ってから考えよう」


 カリナはしばらく器を見つめていたが、やがて匙を取り、少しずつ口へ運び始めた。


 食べているうちに、カリナの肩から少しずつ力が抜けていった。


 それでも一椀を食べ切る前に、匙の動きが鈍くなっていく。


「無理して食べなくていいよ」


「……ん」


 カリナは器を置き、イリスの手を握り直した。まぶたが重そうに落ちていく。


「少し寝たら?」


 返事はなかった。


 握った手をゆっくり緩めながら、カリナは寝台に突っ伏すようにして眠りに落ちた。


 シャーロットはしばらくその様子を見てから、起こさないよう毛布を持ち上げ、カリナの肩へそっと掛け直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。