ep.22 薬代は治ってから
イリスの呼吸は、粉薬を飲ませてから幾分か落ち着いていた。
それでも震えが続いている。
シャーロットは布越しに軽く両手をかざし、こわばった身体の強張りだけを解いてやった。熱そのものは消えない。震えが少し収まっただけだった。
カリナは寝台の脇に座り込んだまま、動こうとしなかった。濡れた髪も、そのままだ。
「あなたも着替えないと。風邪ひくよ」
「平気」
「平気には見えないけど」
言い返そうとしたカリナが、口をつぐんだ。
シャーロットは乾いた服と毛布を持ってきて、そのまま押しつけるように渡した。
「イリスちゃんは見てるから、着替えてきて」
しばらく黙っていたカリナは、ようやく立ち上がり、隣の部屋で着替えを済ませて戻ってきた。
乾いた服に着替えても、寝台のそばから離れる気配はない。
温めた粥を運んでくると、カリナは器を見て、すぐには手を伸ばさなかった。
「これも、あとでお金……」
「今はいい。まず食べて」
「……」
「薬代のことは、治ってから考えよう」
カリナはしばらく器を見つめていたが、やがて匙を取り、少しずつ口へ運び始めた。
食べているうちに、カリナの肩から少しずつ力が抜けていった。
それでも一椀を食べ切る前に、匙の動きが鈍くなっていく。
「無理して食べなくていいよ」
「……ん」
カリナは器を置き、イリスの手を握り直した。まぶたが重そうに落ちていく。
「少し寝たら?」
返事はなかった。
握った手をゆっくり緩めながら、カリナは寝台に突っ伏すようにして眠りに落ちた。
シャーロットはしばらくその様子を見てから、起こさないよう毛布を持ち上げ、カリナの肩へそっと掛け直した。




