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ep.21 お金がありません

 指先に、思ったより強い力がこもっていた。


「お金……ないんです」


 カリナの声が、初めて崩れた。


「私たち、身寄りがなくて、お金なんて……。それ、高いんでしょう。使わせてもらっても、あとでなんて払えません」


 言葉が途切れる。


 目は、薬包とシャーロットの顔を何度も往復していた。


 シャーロットは薬包を持つ手を止め、カリナの顔を見た。


「お金の話は、あとでいい」


「でも……」


「今、イリスちゃんに必要なのはこれだから」


 そう言って、薬包の封を静かに切る。


 カリナは止めようとした手を、そのまま宙で止めていた。


「ここまで歩いてきたの?」


「……おぶって。雨の中、休み休み」


「一人で?」


 カリナは頷いた。


 シャーロットは粉薬を少量の白湯に溶かし、匙でイリスの口元へ運んだ。


 イリスは半分眠ったような状態のまま、それを少しずつ飲み込んだ。


「……飲めた」


 カリナがつぶやく。


 残りの薬を飲ませ終えると、シャーロットはイリスの額にもう一度触れた。


 熱はまだ高い。薬を飲ませたばかりで、変化はない。


「今夜はこれで、少し楽になると思う」


「治った、わけじゃないんだよね」


「うん。まだ様子見」


 カリナは小さく息を吐き、妹の手をもう一度握った。


 雨の音が、屋根の上でまだ続いていた。

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