ep.2 もっと安い白魔法使い
依頼の報酬を分配した帳面を見て、ダリオの眉間に皺が寄った。
「今回の稼ぎ、三分の一近くが補充費で消えるぞ」
魔力ポーション四十本分の代金は、決して安くない。傷薬や包帯の分も合わせると、それだけの額になる。
「オークの数が、報告の倍近くいたので」
シャーロットがそう答えても、ダリオの表情は晴れなかった。
数日後、ギルドの酒場で顔合わせがあった。ダリオが新しく紹介したのは、物腰の柔らかい白魔法使いだった。
「エステルだ。しばらく助っ人として組んでもらう」
「よろしくお願いします」
エステルは丁寧に頭を下げた。悪意のようなものは感じられない、ごく普通の物腰だった。
会話の途中、ダリオがふと尋ねた。
「エステルさん、いつもの依頼だと、魔力ポーションはどれくらい使う?」
「そうですね……二、三本くらいでしょうか」
「二、三本?」
「はい。負傷した方の治療がメインなので、そんなに」
エステルに悪びれた様子はなかった。ただ、聞かれたことに正直に答えただけだった。
シャーロットは何か言おうとして、言葉を選びかねた。
治療だけを見れば、確かにそうかもしれない。けれど自分がやっていたのは、それだけではなかった。
「お前の場合は、治療以外にも色々やってただろ」
ミレーヌがフォローするように言う。それでも、その先は続かなかった。
ダリオは腕を組み、しばらく黙っていた。
「同じ白魔法使いなら、経費が少ない方がいいんじゃないか」
「そりゃそうだな」
ガレスが軽く頷く。深く考えている様子はなかった。
「ミレーヌはどう思う」
「……シャーロットが色々見てくれてたのは分かってる。でも、確かに経費はかさんでたし」
ミレーヌは目を伏せたまま、それ以上は何も言わなかった。
シャーロットは三人の顔を順に見た。誰も、こちらを見ようとしない。
「次の依頼から、エステルさんに入ってもらう」
ダリオの言葉に、返す言葉が出てこなかった。
「……分かりました」
短くそれだけ答えると、シャーロットは席を立った。椅子を引く音が、思ったより大きく響いた。




