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ep.15 卵でも野菜でも

 翌朝、シャーロットは店を開ける前に、前から気になっていた家を回ることにした。


 小さな薬箱をいくつか用意し、必要そうな薬を見繕って背負い籠へ詰める。帳面も一冊、持って出た。


 まずは、以前咳をしていた子どものいる家からだった。


「薬箱を置かせてもらえませんか。使った分は、あとで払ってもらえれば大丈夫です」


 母親らしい女は最初、警戒した顔をしていたが、老婆の家の話をすると表情を緩めた。


「ああ、あそこの婆さんも世話になったって言ってたね……。でも、うちも今、現金がなくて」


「お金でなくても構いません。卵とか、野菜とか」


 女は驚いたように瞬きをした。


「そんなんでいいのかい?」


「はい。先に預けてもらって、薬を使ったときに、その分から引くこともできます」


 女は少し考えてから、奥から卵の入った籠を持ってきた。


「じゃあ、これを。ちょうど産みたてがあるから」


「全部はいただけません。三つで十分です」


 シャーロットは卵を三つだけ受け取り、帳面へ書き留めた。


 次に訪ねた家では、老人が薪を積んでいた。


「薬代の代わりに薪、というのはどうでしょう」


「薪ならいくらでもあるぞ」


 老人は笑いながら、太めの薪を何本も持ってこようとした。


「二本だけで大丈夫です」


「遠慮しなくてもいいんだぞ」


「使っていない薬の分まで、いただくわけにはいきませんから」


 老人は少し不満そうにしながらも、薪を二本だけ背負い籠へ入れた。


 畑仕事をしていた家では、男が小ぶりな芋を差し出した。


「今は使う予定がないんだが、忙しくなる前に預けておきたくてな。使った分から引いてくれ」


「では、二つだけいただきます」


「それだけでいいのか?」


「残りはご家族で食べてください」


 シャーロットは芋を二つ受け取り、帳面へ「預かり」と書き添えた。


「使わなかった分は、次に薬が必要になったときへ回しておきますね」


「ああ。あとは任せる」


 男はそう言うと、畑仕事へ戻っていった。


 一軒、また一軒と回るうちに、背負い籠から薬箱がなくなり、代わりに卵と芋と薪が入った。


 帳面には、名前と預かった品物が並んでいる。


「薬屋なのに、八百屋みたいになってきたな」


 独り言に、自分で小さく笑ってしまう。


 店へ戻り、卵と芋を台所へ運んだ。


 薪はかまどの脇へ立てかけておく。


 現金は増えていない。それでも今夜は、久しぶりに卵と芋の入った温かいスープが作れそうだった。

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