ep.14 使った分だけでいいですよ
三日後、シャーロットは店を開ける前に、老婆の家をもう一度訪ねた。
戸を叩くと、前よりずっとしっかりした声で返事があった。
中に入ると、老婆は寝台の上で身を起こしていた。咳もだいぶ落ち着いている。
「おかげさまで、ずいぶん楽になったよ」
「よかったです」
シャーロットは脈と熱を確かめた。
まだ無理はできないが、ひどい状態は抜けたようだった。
「この前の薬代、いくらだい?」
「急がなくて大丈夫ですよ」
「でも、これからも毎回世話になるわけには……」
老婆は膝の上で手を握った。
「次に熱を出したって、そのとき薬を買えるとは限らないからねえ」
シャーロットは持ってきた小さな木箱へ目を落とした。
「一つ、ご相談があるんですけど」
「なんだい?」
「この薬箱を、ここに置いていってもいいですか? 熱冷ましと、傷薬と、腹痛の薬が少しずつ入っています」
「箱を買えってことかい?」
「いえ。置いておくだけです。使った分だけ、あとで払ってください。使わなかった分のお金はいりません」
老婆は目を丸くした。
「そんな都合のいい話、あるのかい」
「必要なときに薬がない方が困りますから。先に置いておけば、具合が悪くなってから店まで来なくても済みます」
しばらく黙っていた老婆は、やがて小さく頷いた。
「……じゃあ、お願いしようかね」
シャーロットは木箱を棚の上へ置き、蓋を開けた。
「赤い紐が熱冷ましで、青い紐が腹痛の薬です。こちらの小瓶が傷薬」
「赤が熱で、青が腹だね」
「はい。使った薬の包みは捨てずに、箱へ戻しておいてください。傷薬は、蓋を開けたら使った分として数えます」
「わかったよ」
老婆は木箱へ手を伸ばし、蓋を軽く開けた。
「これなら、夜に熱が出ても慌てなくて済むねえ」
シャーロットは薬箱の蓋を閉め、老婆の手が届きやすい位置へ少しだけ動かした。
店へ戻ると、倉庫から同じくらいの大きさの木箱をもう一つ取り出した。
調合台へ置き、乾いた布で埃を拭い始めた。




