ep.12 追放は正しかった
最後のゴブリンが倒れたとき、依頼を始めてから一時間も経っていなかった。
ダリオが剣についた血を払い、周囲を見回す。
「終わりだな」
村の近くに現れたゴブリン六体の討伐。森の奥へ入る必要もなく、逃げた個体を追い回すこともなかった。
ガレスの盾には浅い傷が増えていたが、本人はまだ余裕のある顔をしている。
「腕を見せてください」
エステルが声をかけた。ガレスの籠手と袖の間に、細い傷ができている。
「これくらいなら平気だ」
「小さいうちに治しておきます」
エステルが手をかざすと、傷口を淡い光が包んだ。血が止まり、赤い線もすぐに薄くなる。
「終わりました」
「もういいのか?」
「はい。ほかに怪我をした方は?」
ダリオは脇腹や肩を確かめてから、首を横に振った。
「俺はない」
「あたしも平気」
ミレーヌは杖を下ろした。魔法を数回使っただけで、息も乱れていない。
エステルが荷物をまとめ始める。その横で、ダリオは共有のマジックバッグを開いた。
「魔力ポーションは?」
「一本使いました」
「一本だけか」
「今回は短い依頼でしたから」
エステルは当たり前のように答えた。
「皆さんが強くて、治療もほとんど必要ありませんでした」
ダリオは袋に残った小瓶を見て、口元を緩めた。
「十分だな」
ガレスも大盾を背負い直す。
「これなら、休まず戻れそうだ」
「前とはずいぶん違うな」
ダリオが笑う。ミレーヌは倒れたゴブリンへ目を向けた。
「この前とは、敵の数も時間も違うけど」
「依頼を終えて、全員無事だ。それで問題ないだろ」
「……そうね」
ミレーヌはそれ以上続けなかった。
討伐部位を回収し、四人はギルドへ戻った。受付で確認を終えると、依頼達成が認められ、報酬が満額で支払われる。
ダリオは受け取った硬貨を共有の革袋へ入れた。そのまま近くの卓へ移り、マジックバッグから使った物を取り出していく。
包帯は一つ。傷薬は使っていない。空になった魔力ポーションの小瓶も一本だけだった。
「補充するのは、これだけか」
ダリオが空瓶を指先で転がす。
前回は、魔力ポーション四十本とほかの消耗品の補充で、報酬の三分の一近くが消えた。今回は、一本買い足せば済む。
「報酬もほとんど残るな」
ガレスが共有の革袋を持ち上げた。硬貨の重なる音がする。
「やっぱり、これでよかったんだ」
ダリオは空瓶をマジックバッグへ戻した。
「ああ。次の依頼も、この四人でいける」
ガレスが頷く。ミレーヌは何も言わず、立てかけた杖を手に取った。




