ep.11 冒険者が買っていった薬
昼を過ぎた頃、聞き慣れない足音が店の前で止まった。
戸口に立っていたのは、旅装に土埃をつけた男だった。腰には剣。背には、寝具まで括りつけた大きな荷物がある。
「ここ、薬を扱ってるって聞いたんだが」
「はい。何をお探しですか?」
「傷薬と包帯。それから、回復ポーションがあれば一本欲しい」
「これから森へ?」
「ああ。二日ほど、奥で採取依頼だ」
シャーロットは傷薬を取ろうとした手を止めた。
「お一人ですか?」
「途中までは三人だ。採取場所では別れる」
「では、包帯は二組あった方がいいです」
「二組も?」
「森の中で濡らしたり、汚したりすることがあります。予備まで同じ袋に入れず、分けて持ってください」
シャーロットは清潔な布と包帯を二つに分け、それぞれ紙で包んだ。傷薬も、一つの容器ではなく、小さな容器二つへ分ける。
「こっちも分けるのか?」
「荷物を落としたり、仲間とはぐれたりしても、全部なくさずに済みます」
男は並べられた包みを見比べた。
「ずいぶん慣れてるな」
「四年ほど、冒険者をしていました」
「薬師じゃなかったのか?」
「白魔法使いです。冒険中は薬も扱っていました」
「なるほど。それでか」
男は背負っていた荷物を床へ下ろした。
「回復ポーションは、一本で足りると思うか?」
「戦闘を避ける採取依頼なら、緊急用に一本でいいと思います。軽い傷で使わず、まず傷口を洗って、こちらの傷薬を使ってください」
「高い薬を無駄に飲むなってことだな」
「使わずに帰れるのが一番です」
男は笑い、提示された代金を調合台へ置いた。シャーロットは回復ポーションを布で包み、ほかの薬と一緒に渡す。
「回復ポーションは、すぐ取り出せる場所へ入れてください。鞄の底では、必要なときに間に合いません」
「ああ。外側の袋に入れておく」
男はその場で荷物を開き、予備の包帯と傷薬を別々の袋へしまった。
「こんな村に薬屋があるとは思わなかった。町まで戻らずに済んで助かったよ」
「最近、開けたばかりなんです」
「帰りにも寄らせてもらう。余ってたら、仲間の分も買うかもしれん」
「ありがとうございます。気をつけて」
男は荷物を背負い直し、片手を上げて森の方角へ歩いていった。
シャーロットは棚へ戻り、残った回復ポーションを数えた。
あと二本。
洗って乾かしていた空瓶を一つ取り、調合台の上へ置いた。




