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第20話:大陸中央銀行の設立

アストライア王宮の大広間。かつて私が「婚約破棄」を言い渡されたその場所は、今や『大陸統一経済会議』の会場へと変貌していた。


 壇上に立つ私の前には、かつて私を見下した王たち、将軍たち、そして各国の有力者が、一人の「債務者」として整列している。


「皆様。……本日をもって、バラバラだった各国の通貨・関税・法律を統合します。……今日からこの大陸を統治するのは、王冠を戴く者ではなく、**『大陸中央銀行ノアール・メインバンク』**です」


 私は、一つの巨大な「連結貸借対照表」を空中に展開した。

 そこには、大陸全土の富と負債が、一円の狂いもなく整理されていた。


「これより、全国家は我が銀行の『子会社』となります。……予算編成権、通貨発行権、および軍事指揮権はすべて、私の『実務局』に帰属します。……異論がある方は、今すぐ全額の債務を返済してください。……それができないなら、私の『合理性』に従うこと」


 静寂。……反論する者は誰もいない。

 逆らうことは、自国の生命線を自ら断つことと同義だからだ。


「……さて。……第1章の残り火、不良債権の処理を終わらせましょう。……カイルム、彼らを」


 引き出されたのは、三ヶ月の鉱山労働で痩せ細り、かつての美貌を失ったジュリアンとマリアだった。

 彼らは、かつての婚約者が世界の頂点に立つ姿を、信じられないものを見るように見上げていた。


「エリシア……。……すまなかった、僕が間違っていた。……君の隣に、もう一度だけ……」


「ジュリアンさん。……前にも言いましたが、私は『不採算な資産』を再雇用する趣味はありません。……あなたたちの評価額は、現在マイナスです。……ただし、これまでの労働実績により、負債の0.5%が相殺されました。……完済まであと百年ほどかかりますが、励みなさい」


 冷淡に告げ、私は背を向けた。

 彼らが叫ぶ「愛」や「後悔」は、私の計算機には一文字も入力されない。


「……お嬢様、これで全部ね。……世界は、一枚の帳簿に収まったわ」

 セラフィナが、感慨深げに『大陸総勘定元帳』を閉じる。


「いいえ、セラフィナ。……これは『整理』の終わりに過ぎません。……明日からは、この大陸の『成長戦略』を立てなければなりません。……カイルム。……次の四半期計画、準備はできていますか?」


「はっ。……未踏の南大陸との『貿易ルート』の策定、完了しております」


「素晴らしい。……では、行きましょう。……私の帳簿に、空白(赤字)は必要ありませんから」


 銀髪の令嬢は、眼鏡を直し、颯爽と歩き出す。

 その足音は、新たな世界の脈動――正確に時を刻む、時計のようなリズムを刻んでいた。


 ――第2章『大陸経済圏の覇者』 完。

第2章、最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。


追放された令嬢が、数字と法律で世界を買い叩き、

最終的には「世界そのもの」を管理するシステムへと昇り詰めました。

無能な権力者が感情で壊したものを、有能な実務家が冷徹に、

しかし誰よりも美しく再建する。

この「実務の美学」が、皆様の心に少しでも残れば幸いです。


第3章、あるいは新連載への「投資」として、

ぜひブックマーク、そして評価(☆☆☆☆☆)をお願いいたします!

皆様の1ポイントが、エリシアの「次なる事業計画」の資本金となります。


本当に、ありがとうございました。

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