第41話 出会い
人間の遠征軍が、北の山の麓の小さな集落にたどりついて、攻撃を、始めた。
そこは、魔族と人間の境境にある、交易の村だった。
「イーリャ、これでも人間を信じるのか?」
次兄の問いに、イーリャは即座に頷いた。
「信じる……信じたい」
それだけだった。
深紅の外套を翻し、魔族兵を率いて南へ向かった。
同じ頃。
勇者レオンもまた、神殿からの急報を受けていた。
「魔族の軍勢が南境へ向かっています」
仲間の魔術師が険しい顔で言う。
「侵攻かもしれません」
レオンは迷った。
(神託と違うのではないのか?)
だが、向かわねばならない。
守るために。
村に着いたとき、すでに戦いは始まっていた。
冒険者のグレンが、中心になって、魔族に攻撃を仕掛けていた。
火に弱い種族だ。攻撃は主に火矢が使われ、村は大惨事家になっていた。
その前頭に立つのはーー
「グレン! 止めろ! 我らは戦いに来たのではない!」
レオンが、叫ぶ。
誤解だった。
ここの魔族は、人間にも友好的で、人を襲わない(精気を奪わなくても)
生きていけるように進化していた。
だが、外から見れば区別はつかない。魔族は魔族なのだ
レオンは駆け出す。
「止まれ!」
光をまとった剣が、闇を裂く。
その瞬間。
イーリャもまた、魔力を放っていた。
グレンを止める二つの力が、空中で衝突する。
閃光。
びっくりしたグレンは、その場にしりもちを着いた。
「……なぜ? 『見極め』だけではなかったのか?」
イーリャの声は震えている。
レオンは、十歳くらいの少年が半魔の王子であることがすぐにわかった。
グレンは、イーリャの圧倒的な魔力と光の力の前に震えていた。
「そもそも、あなたが人間界に来なければ……」
その言葉は、刃より鋭かった。
イーリャは何も言えない。
自分も、同じことを思ったからだ。
お前が人間界に行かなければ、と。
ルシアの寿命。
この村の仲間たち。
その結果。
救えたはずの命を、落とした。
風が、灰を巻き上げる。
イーリャは背を向ける。
「……あんたが見極める人なのか?」
イーリャの声は、かすれていた。出会った半魔王子と光の勇者の初ての出会い。
それは、双方に大きなダメージを残した。




