第34話 従兄と再会
アルテア王国の城壁の外に広がる町は、夕暮れの赤い光に包まれていた。
行軍の列がゆっくりと町へ入ると、通りの人々は驚いたように道の端へと寄った。
白い衣をまとった神殿の兵士たち。
その中央には、聖女の輿。
その行列は、まっすぐ冒険者ギルドの前で止まった。
酒場を兼ねた広いホールでは、すでに多くの冒険者たちが様子を見に集まっていた。
「来たぞ……」
「本当に聖女か?」
ざわめきが広がる。
その中で、腕を組んで壁にもたれていたクレンは、無言でその様子を見ていた。
神殿の兵士など珍しくもない。
だが聖女が来るという話は、さすがに気になっていた。
ゆっくりと、輿の布が持ち上げられる。
そして、小さな影が現れた。
白い巫女服。
まだ幼い顔立ち。
だがその少女は、きょろきょろと周囲を見回すとーー
次の瞬間。
「クレン!!」
酒場中に響くような声だった。
一瞬、全員が固まった。
クレンも、何が起きたのか分からず目を瞬かせる。
だが次の瞬間、輿から飛び降りた小さな影が、まっすぐこちらへ走ってくるのが見えた。
「クレン!」
白い巫女服の裾を持ち上げながら、少女は一直線に駆けてくる。
兵士たちが慌てて声を上げた。
「聖女様!?」
「お待ちください!」
だが少女は止まらない。
そしてーー
クレンの胸に、思いきり飛びついた。
「うわっ!?」
勢いに押されて、クレンは一歩よろけた。
腕の中に収まった小さな体は、懐かしい感触だった。
金色の髪。
よく知っている声。
「……ルシア?」
信じられないものを見るように、クレンは少女を見下ろした。
少女は満面の笑みを浮かべていた。
「久しぶり!」
まるで昨日別れたばかりのような顔だった。
周囲の冒険者たちは、ぽかんとしてその光景を見ていた。
「……おい」
「聖女って……」
「今、抱きついたぞ?」
ざわめきが広がる。
クレンはまだ状況が理解できていなかった。
「お前……なんで……」
言葉が続かない。
するとルシアは、少しだけ困った顔をして言った。
「だから言ったでしょ?」
ぺろっと舌を出す。
「聖女なんかじゃないって」
その仕草は、昔と全く変わっていなかった。
クレンは、しばらく黙ってルシアを見つめていたが――
やがて大きく息を吐いた。
そして乱暴に彼女の頭を撫でた。
「……バカ、無事なら連絡くらいよこせ。心配したぞ」
それだけ言うと、ルシアは嬉しそうに笑った。




