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四月。乾季のハワイ、オワフ島の空は高く、澄み渡っていた。
緩やかな潮風に、真っ白なカーテンが揺れていた。ロバート・ウィーヴァーはその窓辺に近づき、空を見上げた。
白い雲が一筋、真っ青なキャンパスに線を引いていく。あれは飛行機雲だろうか。
「ロバートさん、どうぞ」
若い女性の声だった。ここ一カ月、毎日のようにここへ足を運んでいるロバートとは、顔見知りの看護師だった。
「今日こそは、何か話してくださるといいですね」
ブロンドの髪をまとめた二十代前半の看護師は、そう言ってウィンクをすると、出てきた部屋のドアを開けたまま去っていった。
そう願いたいよ。ロバートはその背中に頷くと、意を決して部屋に入った。
真っ白なカーテンが揺れていた。開かれた窓の向こうには、青い空と海が広がっている。
彼はその手前のベッドにいた。今日も昨日までと変わらない。視線を外に向け、遠く海の彼方を見つめているようだった。
「今日もいい天気だね、グレイグ」
言いながら、ベッド脇に置かれた椅子に腰かける。これも昨日までと変わらない。
そして沈黙。風のそよぐ音と遠く波の音を聞く。昨日までとまったく同じだった。
こうして同じ空間にいるだけの時間が一時間ほど続く。話しかけたとしても一方通行で、答えが返ることはない。これがここ、パールハーバーの米海軍太平洋艦隊基地内にある病院で、面会を許されてから続けられてきた、グレイグ・リーと過ごす時間だった。
三か月前、『X計画』が生んだ損失は、近年の米軍軍事活動の中で、あまりにも突出していた。金銭的な面に留まらぬその損失を埋めるには、相当の時間と外交努力が必要であり、政財官はおろか世論も巻き込んで、アメリカ国内は上を下への大騒ぎになっていた。




